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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十章 ソロモニア制圧戦

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反撃準備

 その頃、魔界ではーーー。


 人間界から戻ってきたサトゥニアが、緊急の幹部会議を執り行っていた。


 大概の場合、最高幹部の誰かが発案し、それにサトゥニアが応じる形で行われることの多い、緊急会議だが、今回は違った。


「…追放した罪人を呼び戻し、魔界内部の法で再度裁く…?」


 幹部の一人で、ペルセの実母でもあるデメナが、首を傾げている。相変わらず、母娘でそっくりな顔をしている。


 デメナを見る度に、ペルセをより助けてやらねば、という気持ちが強くなってしまうのは、ここだけの秘密だ。


「あぁ…今回ペルセが行った、人間界の中にあるエスカンという国…その隣国ドゥローラで、魔界から追放された悪魔を拘束・服従させ、使役しているケースが確認されている。エスカンからの情報だが、これがその悪魔達の一覧表だ」


 サトゥニアはそう言うと、ヨルゼフからもらった資料を、円卓に出す。そこには、ドゥローラ側が数百年間使役し続けてきた、かつてはそれなりに名前の売れていた逃亡犯の悪魔達の名が書かれていた。


 その人数は、ゆうに二十を超えていた。


「隣国のエスカンという国が把握しているだけで、これほどいるのだ。罪人であるがゆえ、人間界でどのような扱いを受けてようと、罪を犯した報いとして黙認してきたが…」


 サトゥニアはそう言うと、一度言葉を切る。


 幹部たちの視線が、サトゥニアに集まる。

 非常に言いにくいことだが、言わなければなるまい。この決断を下した、最大の理由を。


「ドゥローラの国王によれば、他所で罪を犯そうが、自国で引き取り、裁くべきとのことだったのでな。我々もその原則に従い、動くまでだ」


 サトゥニアは静かに、しかし厳かにそう言った。


 一瞬の静寂。しかし、その静けさも、大きくて豪快な笑い声で、すぐに破られた。


「ワハハハハハハ!!相手の理屈を持って叩きのめすわけか!!貴様もいい性格しておるのう!!」

「うるさいぞ、サブリナ。会議中だ、静かにしてろ」

「何じゃアモディエナよ。わざわざサトゥニアが直接招集したのじゃ、どんな面白い話が出るかと思うて来てみたら、違う方向で面白いではないか!!」


 幹部の一人であるサブリナが、高笑いしている。その隣で、同じく幹部のアモディエナがサブリナをたしなめる。


 政が嫌いなサブリナが、珍しく会議に来たと思ったら、やはりそんな理由だったか。予想はしていたが、相変わらずだ。


「…数百年ぶりの人間界との交流事業、何のトラブルもなく終わるとは思っていなかったが、こんなトラブルは予想外だな…」


 ペルセの父で、自分の従兄弟でもあるクロニオスが、大きくため息をついた。

 だが、その反面、机の上で握られてる拳は震えていた。


「落ち着け、クロニオス。ペルセなら明日帰ってくる手筈になっている。ペルセには酷だがな…」

「イアノさんからも報告は受けています。…突然の別れが辛くて、ペルセさんも泣いていた、と。私としても、怒りの気持ちはありますし、あの子の心情を考えると、察するに余りあります」


 サトゥニアの言葉と、デメナの言葉が重なる。

 特にデメナは、イアノの直属の上司であるがゆえ、現在のペルセの様子を逐一聞ける立場だ。


 ーーーだからこそ、余計に辛いのだろう。その表情は、悲しみと怒りで歪んでるように見える。


「クロニオス、デメナ。お前たちは、明日帰ってくるペルセの心のケアをしてやれ。調査や外交については、俺とアモディエナが中心となって行う」

「魔王様…」

「アスティアノでの保護者であるマールやハイーラも、事情を話して呼び寄せろ。ケア要因は多いほうがいいだろう」

「…分かりました。すぐに動きます」


 デメナは悲しげな表情を浮かべていたが、すぐに切り替えたようだ。

 愛情深い両親だからこそ、今は政治に関わらせるべきではない。それだけだった。


「ワシはどうするのじゃ、サトゥニアよ?」

「お前はいつも通りだ。お前の役目が必要になったら、こちらから声をかける」

「…今回ばかりは、ワシに声がかからぬほうが良さそうじゃがのう…」

「…分かっている」


 サブリナも、教養はないが、やはり阿呆ではない。理解が早くて助かる。


「アモディエナ、調査を頼めるか」

「名前と大まかな住所まで判明しているのならば、調査は比較的容易です。すぐに取り掛かります」


 アモディエナに声をかけると、アモディエナはすぐに機材を取り出し、そこに魔力を流し込む。


 相変わらず、実務の鬼だ。安心して、任せられる。


 ドゥローラへのカウンターのために、魔界上層部が動き出すのだったーーー。

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