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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第十章 ソロモニア制圧戦

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ミノトたちとの別れ

 来てしまった。


 大好きなイアノが、迎えに来た。


 それは、ミノトとの長いお別れの時が来たことを意味している。来てほしいのに、来てほしくなかった。


「…ペルセちゃん、帰りますわよ」

「やだ…もうちょっと、お話する」


 普段はイアノが来たら、特に抵抗することなく甘えるところだ。だが、今回ばかりは、譲れなかった。


 ミノトはすでに涙をポロポロと流しているし、ダリスも顔を伏せていて何かを堪えてるように見える。二人とも、この時間をまだ惜しんでることが分かった。


「ペルセちゃん…」

「…ダメ?」

「…そんな表情をしないでくださいまし。それでダメだなんて、言えるわけがありませんわ」


 ペルセがイアノを見つめると、イアノも何だか我慢してるかのような表情を浮かべた。


 ーーー自分の安全をとるためには、仕方のないことだとは理解している。だが、それでも、こんなのはイアノでさえも望んでいなかったことなのだろう。


 そう思うと、余計に胸が締め付けられた。


「ペルセちゃぁん…!」


 泣きながら、ミノトが駆け寄ってきた。そして、ペルセの手を、自身の両手で包みこんだ。


 涙を拭ったせいか、お互いの手が少し湿っていて、生温かい。だが、その温かさが、余計に切なさを加速させていた。


「また、会えるよね…?私達のこと、忘れないよね…!?」

「…うん…忘れないよ。ミノトのこと、ダリスのこと…エストラの、皆のこと…ッ!!」


 もう、我慢ができない。

 とうとう、ペルセの目から涙がこぼれ始めた。


 涙で視界がぼやけてくる。それでも、涙は次から次へと溢れてしまう。


「ペルセ」


 すると、ダリスの声も聞こえてきた。普段の冷静で凛々しささえおぼえる声色とは違う、震えた声だった。


 だが、もうそちらを見ている余裕などなかった。


「トロールの一件では、お前に助けられたな。そのことに関して、まだ礼を言っていなかった。…ありがとうな、ペルセ」

「ダリス…」

「…俺もお前に、人間以外の種族のこと、色々と教えたかったよ…」


 ダリスはそう言いながら、ペルセの肩に手を置いてくる。毛むくじゃらで、大きな手。いつもより力が強く、しかし震える手であった。


 ペルセは涙を拭き取る。まだこぼれ続けていたが、視界が少し晴れて、状況が確認できるようになった。


 ミノトが自分の手を握り締めて泣いており、ダリスが自分の肩に手を置いたまま、俯いている。


 ーーー二人とも、自分と同様に、感情が処理しきれていないようだ。


「…ペルセちゃん。本当に時間ですわ。そろそろ戻って、魔界へ帰る準備をしなければ」

「うん…」


 だが、時間は残酷だ。

 無限にこの時が続くわけではない。それは、承知の上であった。


 イアノに告げられ、ペルセは惜しみながらもミノトの手を離し、イアノの元へと向かう。


 ミノトが手を伸ばそうとしていたが、ダリスに止められたのか、その手は空を切ってしまっていた。


「ペルセちゃん…うっううっ…」

「ミノト…」


 泣き崩れるミノトを、ダリスが慰める。感情のまま振る舞うミノトをダリスが止めるという、いつもの光景。

 だが、今日は何だか、その光景が物悲しく見えてしまう。


「ミノト…ダリス」

「…何だ?」

「バイバイ…また会おうね」

「…………あぁ」


 ペルセはそう言いながら、二人に手を振った。


 ミノトはもはや、こちらを見ることすらできていない。ダリスでさえも、今にも泣きそうな表情で、何とか手を振り返してきていた。


「…行こっか、イアノお姉ちゃん」

「えぇ…」


 ペルセはイアノと共に、家路へとついた。

 ペルセは二人に背を向けることなく、ダリス達の姿が見えなくなるその瞬間まで、ずっと二人に向けて腕を振り続けるのであった。

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