夕暮れの幕間
放課後。
これが、最後になる。そう思うと、ペルセの胸はいっぱいだった。
エストラの制服を着るのも、今日が最後になってしまうかもしれない。見慣れ始めた、エストラの校門も、もう見ることができないかもしれない。
「ペルセちゃん…!!」
校門を出ると、すぐ隣から声をかけられる。ペルセはそれに反応し、視線を向けた。
ーーーミノトだ。その隣には、ダリスもいる。
学生証の返却等の留学終了手続きを行っていたため、かなり遅くなってしまったはずなのだが。
まさか、ずっとここで待っていたとでも言うのか。
「…ミノト。それにダリスまで…。どうしてここに?」
「最後くらい、一緒に話そうよ!!お迎えがくるまで、三人でさ!!」
ミノトにそう言われ、ペルセは黙り込んだ。
今日も今日とて、ペルセにはお迎えがある。だから、いつぞやのように、三人で一緒に帰ることはできない。
だから、ミノトのこの気遣いは、素直にありがたかった。
「あ…っ…」
すると、ペルセのカバンから、数枚の紙切れが剥がれ落ちる。
それは、ミノトと二人で遊んだ時、初めて撮ったプリクラ写真だった。その中には、大きな文字で「ミノト×ペルセ!人間×悪魔!種族を超えた友情の証!!」と書かれている。写真の中で、ペルセとミノトは背中合わせで腕を組んでいる。
ーーー大切な思い出ゆえ、カバンに貼り付けて、ずっと持ち歩いていた。
「お前、こんなもの撮ってやがったのか」
「だってダリス嫌がるじゃん」
「…俺が男だということ忘れてねぇか?」
「忘れてないよ!?」
落ちたプリクラを拾い上げ、カバンに貼り直してると、二人のコントのようなやり取りが聞こえてくる。
こんな軽快で心地よいやりとりも、しばらく聞けなくなるのか。
ーーー寂しい。プリクラを見て、余計にそう思ってしまう。
嫌がられるかもしれないが、ダリスともプリクラを撮ってみたい、と思ってしまった。
「…お別れ会、皆でカラオケ行って、ファミレスでご飯食べる予定だったんだよ」
「からおけ?ふぁみれす?」
ミノトの口から、未知の単語が出てきた。だが、口振りからすると、ペルセの知らない娯楽なのだろうか。
興味はあるし、行ってみたい。だがそれも、当面叶わぬものとなってしまった。
「写真もいっぱい撮りたかったし、魔界のことをもっと聞きたかったし、人間界のことももっと話したかったよぉ…ペルセちゃん」
そう言いながら、泣くのを堪えてるような表情で、ミノトがこちらを見つめてくる。
思わず釣られて泣きそうになってしまう。
ーーーいや、もう無理だった。ペルセの目尻には、すでに涙が溜まっていた。
「…いつもならこのアホの言うことは真に受けるな、というところだが…今回ばかりは、俺も同意見だ」
「ダリス…」
ダリスは表情を見られたくないのか、顔を反らしている。だが、その肩は明らかに震えていた。
「休日、楽しかったよね。ウサギとの触れ合いもしたし、スイーツも食べた。ダリスも入れて、三人で遊びたかったよね…」
「うん…」
そう言いながら、ペルセは目尻にたまっている涙を拭き取る。だが、すぐに涙が溜まってしまう。
何度も、何度も拭いた。だがそれでも、あとからあとから涙がたまり、零れそうになってしまっていた。
「ペルセちゃん、お迎えにあがりましたわ」
しばらく三人で話をしていると、大通りの方から、お迎えとしてやってきたイアノの声が聞こえてくるのだった。




