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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第九章 エスカンとドゥローラの会合

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最悪の空気

 元々ピリピリしていた空気が、一瞬にして凍る。


 ヨルゼフもラウラも、サトゥニアもイアノも。

 そして、ペルセも。何も、言葉を発することができない。


 ただ一人、渦中のレボルタだけが、不思議そうに首を傾げている。


「国の資料を確認したら、あんた俺らの召喚した悪魔、そいつを奪って逃げたそうじゃねぇか」


 レボルタはそう言うと、腕組みをし、ため息をつきながら背もたれに寄りかかる。

 そして、呆然としている面々に向け、平然と言葉を続けた。


「ソロモニアが動いた要因の一つは間違いなくラウラ、お前だ。俺にソロモニアの管理責任を問うというのならば、まずラウラのことに関しての説明と詫びがいるだろうが」


 そう言うと、やれやれとでも言いたげに、レボルタは首を振った。


 ーーー意味不明だ。

 ラウラはソロモニアに襲われた、被害者だ。だが、聞き間違いでなければ、目の前の男はそんなラウラに謝罪を求めている。


 なぜだが、かつて自分をダスノム生まれというだけで徹底的に見下し、殺そうとしてきたアンドレイスという男が、ペルセの頭の中を過った。

 そんなアンドレイスと同等、下手をするとそれ以上に、レボルタの言ってることの意味が分からなかった。


 隣に座っているサトゥニアが、とっさに口を開こうとした。だが、それよりも先に、イアノが静かに口を開いた。


「…よくそんなことが言えますわね。誘拐された悪魔の姉の前で」

「あ?」


 そのイアノの声は、まさに絶対零度。ソロモニアと直接対峙したときと少し異なる、怒りのあまりに冷静になってるかのような声色だ。


 レボルタの返事に、特段イアノは反応することなく、淡々と言葉を続けた。


「その論理で返すとするなら、悪魔本人の意志を無視して、魔界から誘拐同然に召喚したアナタにも説明責任が生じますわよ」

「…はぁ…」


 そんなイアノの言葉に対して、レボルタは心底呆れたようにため息をついている。


 一体、何を言う気なのか。ハラハラしながら、レボルタを見つめていた。


「悪魔本人に意志?必要ねぇだろ。人間界に呼び出されたんなら、傀儡になるに過ぎねぇだろ。ここは人間の世界だ、人間以外の種族は人間の奴隷だ。そっちの世界でも、悪魔以外の種族はそのような扱いをしている、違うか?」


 レボルタのその言葉に、ペルセですら頭に血がのぼる感覚を覚えてしまう。


 自分が魔界から人間界に留学に来て、ミノト達含めたエストラの生徒達と仲良く暮らす。留学期間中という限定的な期間であるとはいえ、それすらも否定してくる、レボルタの言葉。


 ーーー怒りの感情を抑え込むのが、大変だった。


「…その話は今すべきことではない。イアノもペルセも落ち着け」

「しかし…」

「この男の考え方を糾弾しに来たわけではない。腹立たしくはあるが、この会合の目的はソロモニアについてだ」


 だが、サトゥニアは冷静だった。

 内心で強い怒りを抱えているかもしれないが、表情には全く出ていない。


 魔王であるサトゥニアから諭され、イアノも渋々引き下がった。


「…あんたのお子様な価値観などどうでもいい。今話をしたいのは、あんたの国にあるソロモニアという組織について、どうするかだ」

「どうするも何も、残すに決まってらぁ。人間界で愚かな悪魔が生きたいというのなら、召喚術式や契約術式に関して研究し続けてるソロモニアは、むしろ必須な組織だろ」


 サトゥニアの冷静な問いに対し、レボルタは嘲笑しながら答えるのだった。

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