レボルタとの対面
翌日午後三時。
昨日同様、ペルセ達はエスカンの王宮の応接間へと呼び出されていた。
円卓を囲う面々も、昨日と同じだ。
しかし、違う点が一つだけある。
「…本当にこんなもので、ヤツがおびき出せたのか?」
「えぇ。レボルタ国王は、人間以外の種族の『人権』は認めていませんが、『力』や『知能』は認めておりますので」
サトゥニアの手元には、小さな箱が置いてある。何の変哲もない、綺麗ではあったが地味な木の箱だった。
だが、その箱の中からは、子供のペルセにも分かるほどに、濃縮された魔力の気配が感じ取れた。
一体、そんなものを用意して、何をするつもりなんだろうか。もしかして、昨日サトゥニアが言っていた『餌』なのだろうか。
ペルセは不思議に思いながらその箱を見つめていると、後ろから扉の開く、ドアの軋む音が聞こえてきた。
振り向くと、そこには老齢の、白髪で茶色いスーツ姿の男性がいた。見てくれこそ穏やかそうな老人だが、その魂魄を見ると、悪意にまみれているのがペルセにも分かった。
ーーーハッキリ言えば、不愉快極まりない。その感情が表に出てしまっていたのか、ペルセの表情は、かなり歪んでいた。
「…ペルセ、大丈夫か?」
「私、あの人嫌い…」
そんなペルセを見たサトゥニアが声をかけてくる。ペルセは周りに聞こえないように、サトゥニアへ本音を漏らした。
「気分が悪いなら、別室待機でも構わないが」
「…ううん、大丈夫」
「…分かった。だが限界を迎えたらすぐ言えよ」
だが、不愉快で気分が悪くなるとはいえ、耐えられないほどのものではない。ペルセはその場に座り続けていることにした。
ふと、ペルセはイアノの方を見る。
イアノはその男を見つめても表情を変えていない。だが、その内部にある魂魄は、不快感を示している。自分と同じデメナ由来の能力を持つゆえに、イアノにも見えているようだ。
だが、男はそんな視線をまるで気にする様子を見せずに、まるで自分の家に入ってきたかのように躊躇なく歩いていき、ヨルゼフとサトゥニアの二人からとも離れた席へと座った。
「さて、話を始めようか」
男は頬杖をつき、面倒くさそうに口を開いた。
何て太々しい態度だ。子供であるペルセですらも、あんな態度を取ることはない。もしあんな態度を取ろうものなら、ハイーラやデメナから叱られるだろう。
だが、ヨルゼフはため息をついただけで、特にその態度を指摘することはなく、資料を配ろうとした。
だが、男はそれを止めた。ヨルゼフは動きを止め、不思議そうに男を見つめた。
「私が来たのはただ一つ。魔力結晶とやらをこちらへ寄越せ。そしたらお前らと話をしてやる」
「…レボルタ陛下。それはあまりに要求が…」
「サル風情が、たてつくつもりか?何もメリットがないのに、お前らと話をする気はない」
レボルタと呼ばれた男が、まるで子どものようなワガママを言っているようにしか見えない。
その振る舞いを、ペルセの同級生であるミノトがやっているならまだ可愛らしいし、何とも思わなかったのだが、大人であるレボルタがやっているのは不愉快だった。
ラウラも同じだったようで、自身の感情爆発を抑制するためか、眉間を指でおさえていた。
「…あんたが、ドゥローラ国王か。随分とお子様な国王のようだ」
「私の知る悪魔の子供の方が、よっぽど大人ですわね」
だが、レボルタの態度が、サトゥニアやイアノの前で通用するはずがない。
二人の言葉に、レボルタは顔を引きつらせていた。




