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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二章 上位の町・アスティアノ
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進まぬ調査、不審な異常

 ハイーラは椅子に腰かけ、自身の魔力を空間に放出する。その魔力は、様々なデータを出力できるモニターを形成した。


「…何を調べるの〜?」

「ダスノムに関して。何が乱れが起きてないか、とかをね」


 後ろからマールが声をかけてくる。ハイーラは雑に答えつつ、画面の指示に従い、ダスノムの観測データにアクセスしようと試みた。


「ありゃ〜。ロックかかってる〜」

「…こういう時は、アスティアノに住んでて良かったと思えるわね」


 画面には、見慣れない文字。どうやら、データには閲覧制限がかかっているらしい。

 恐らく、アスティアノ在住の者でなければ、ダスノムの観測データにアクセスすることすらできないだろう。


 ハイーラは、モニターに自身の魔力をかざす。

 モニターの表示は、すぐには変わらない。


「…こういうの、あるんだね〜」

「これは、アスティアノの悪魔の特権みたいなものよ。…まぁあんたは、できたとしても使わなさそうだけど」


 軽口を叩きつつ、画面が進むのを待っていた。


 ーーーしばらくすると、無機質な機械音が、部屋に響いた。


「…よし」

「へ〜、こんな感じなんだね〜」

「私も久し振りに聞いたわ、この解除音」


 厄介な調べ物をする時にしか使わない、この特殊データベースへのアクセス。ハイーラとしても、あまり聞きたい音ではない。


 アクセスした先には、様々なデータのタイトルが表示されている。


「…マール。あんた、ペルセちゃんを拾ったのはいつ?」

「え?」

「いいから答えて」


 データベースの中を探りながら、背後から覗き見ているマールに質問をする。

 マールは若干困ったような表情を浮かべているが、そんなのは関係ない。


「…ん〜、この間の、ハイーラに連絡取った日だね〜」

「…あんた、その日のうちに私へ連絡してきたわけ?」

「保護してすぐではないよ〜?」


 明らかになる事実に、思わず手が止まる。

 自身が会って間もない子を、その日のうちにベリアスからアスティアノへ連れてきたのか。


 ーーーまた随分と勝手なことをする。


 …ハイーラ絡みのことでは遠慮を知らないマールらしい、といえばそうだが。


「…まぁいいわ。じゃあ、あの日の周辺の記録を見れば良いのかしらね」


 自分がペルセと出会った日から、少し遡った日付のログを探し出し、中身を手早く見る。


 ーーーハッキリ言って、ほとんどのものは、代わり映えのしないデータであった。

 テンプレートに当てはめたかのような文章、グラフを貼り付けており、何も捻られていない。見る側としては助かるが、データの管理としては大丈夫なのか。


 ーーーそう思いながら、日付を徐々に遡ると、一つだけ、おかしなデータがあった。


 これまで見てきたデータにあったグラフ。全体的に見ると、今までとほとんど変わらないものだった。


 ーーーただ、一点を除いて。


「…何よ、これ…」

「うわ〜…これは…」


 ほんの一瞬の、強すぎるピーク。データに記録されてるのは、わずか数秒間の変化ではあったが、明らかな乱れを示すグラフ。


 このピークが意味することは、何なのか。ハイーラにも、隣にいるマールにも、それは分からない。


 分かるのは、このデータが異常値を示していること。それだけであった。


「この乱れがペルセ由来なんだとしたら〜…そりゃあ、ベリアスでも、一瞬とはいえ、大きな魔力乱れを感じ取れるわけだよね〜…」


 隣でデータを眺めているマールが、何だか納得したように頷いている。

 その一方で、ハイーラ報告書の内容を食い入るように見つめている。


 ーーー明らかな異常値にも関わらず、文章はほとんど変わっていない。この魔力乱れも、突発的なものとして処理されている。


 どう見てもおかしな話だが、これを修正する権限も理由も、自分にはない。


「…結局、役には立たない、か…」

「ベリアスのデータにアクセスできないの〜?」

「…探してみる」


 ハイーラはダスノムのデータから一度離れ、ベリアスのデータに入ろうと試みた。しかしーーー


「…ダメね。ベリアスのデータに、アクセスできないわ」

「え〜」

「ダスノムまでしか調べられないようね…私達じゃ」


 モニターには、無機質な「アクセス不可」の文字が踊っている。アスティアノの悪魔の権限では、ベリアスのデータにアクセスすることはできないようだ。

 マールは不満そうだが、実際にできないのだから仕方ない。


「…結局、ダスノムで何かあったかも、くらいしか分からなかったわね」


 モニターを消し、ハイーラは疲れた様子で背もたれに寄りかかる。


 結局、何が要因なのか。

 ペルセとアンドレイスの間に、一体どんな因縁があったのか。


 結局、ペルセを治療しつつ、彼女が目を覚ますまで、待つしかない。

 …それが、とんでもなく、もどかしかったーーー。

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