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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二章 上位の町・アスティアノ
30/66

知るはずのない敵

「…マール…この子、一体何なのよ?」


 ペルセをベッドに寝かした後、再度マールに聞いた。

 あの感じは、絶対に普通ではない。


「………ん〜…何なの、といわれても〜………」


 魔力を自己回復に回してる分、普段よりもマールの応答が鈍い。ただ、言葉が聞こえてないわけではないようで、困惑気味に返事をしてきた。


 軽く、寝ているペルセに目を向ける。その顔は、どう見ても無垢な少女の顔だ。

 しかし、先程の光景を目にして、それが本物なのかどうかも分からなくなってきている。


「…質問を変えるわ。…何でアンドレイスがあの場にいたの?」

「……あんど、れいす……」

「アンドレイスの名前は、聞いたことあるでしょ?」

「……あ〜……アイツ、アンドレイスだったんだ〜」


 マールは、アンドレイスのことを詳しくは知らないようだ。…まぁ、マールもベリアスに住んでからかなり経つし、無理もないかもしれない。


 しかし、あの異常者がなぜペルセ達の元にいたのか。状況次第では、マールにお仕置きをしなければならない。


「…最初に確認しておくけど…。あんた、ペルセちゃんがダスノムの生まれだ、ってこと、他所で言ってないわよね?」

「………酷くな〜い?いくらなんでも〜…私の口は、そこまで軽くはないよ〜?」

「…そうよね。疑ってごめんなさい」

「も〜…」


 マールは、口を尖らせてきた。ハイーラとて、マールが口を滑らせたなどとは欠片も思っていない。

 とはいえーーーなおのこと、アンドレイスがあの場で倒れていたことが不可解だ。


「…たださ〜…」


 少し考え込みながら、マールが口を開いた。

 何か、知ってることがあるのか。ハイーラは、一度口をつぐみ、耳を傾けた。


「…何だか、最初から…ペルセがダスノムの生まれだ、って、分かってるっぽかったよ〜」

「…は…?」


 一瞬の静寂。家のきしむ音が、やけに大きく聞こえた。

 ーーー衝撃の事実だった。


 ペルセのことを、最初からアンドレイスが知ってた?

 あの異常思考の持ち主が?


「ど、どういう、こと…?」

「…詳しくは、私も分からないけど〜…。何だか、一度会ったことがあるっぽい感じだったよ〜」


 ーーー余計に分からなくなった。


 アンドレイスの考えは、アスティアノの中で神聖な悪魔は一部で、それ以外は下等、というものだ。アスティアノに住まう自分達サキュバスさえも、見下しの対象だ。

 ましてや、ダスノムの生まれの者が相手となるとーーー


「…知ってるんなら、あの男が、生かしておくはずが…ないわよね」

「ん〜…私にも敵意は向けてたし殴ってきたけど〜…ペルセに向けてたのは…アレは、憎悪と殺意に近かったね〜…」


 アンドレイスには、実際に見下してる対象を消した、という噂も絶えない。子供だからといって、見逃すような性格でもない。


 にも関わらず、ペルセはこうやって生きてて、マールに拾われている。


「…ねぇ、マール…」

「ん〜?」

「…ベリアスで、この子に何かあったの?」


 マールはなにか知っているのか。一縷の望みをかけて、質問をしてみる。

 マールはなにか思い出すように、天井に視線を向けた。


「ベリアスでも確かに、この子が要因の魔力乱れはあったね〜」

「…そう…じゃあ…」

「似てはいたけど〜…あの時とは、まるで質が違うよ〜」


 …納得しかけたのに、ぶち壊しだ。

 でも、考えてみたら、当たり前だ。ベリアスでアンドレイスに襲われてたんだとするなら、マールがあんなのんびりした調子で、自分に連絡を取れるはずがない。


「…なら、何なのよ…」

「う〜ん…私も分からないね〜。でも、どこかで会ってたのかもね〜…」


 ハイーラは頭を抱えた。一体、二人の間に何があったのか。ペルセが目を覚まさないことには、解決策は見出だせないのか。


「…あと、考えられるとしたら〜…ダスノムで何かあった、とか〜?」

「え!?…そんなこと…」


 マールは深く考えていないのかもしれない。しかし、その視点はなかった。


「…ちょっと〜、適当に言っただけーーー」

「いや…有り得なくはないわ。あの、異常者なら…」


 やりかねない。

 あのイカれた思想を持つアンドレイスなら。

 劣等の極みであるダスノムを、


 ーーー滅亡させることも。


「…調べてみる必要が、ありそうね」


 そう呟き、寝室から出ていった。

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