動き出す対話への道
しばしの静寂。
ヴァーレアもイアノも、画面の向こうに写るデメナの姿を見つめているだけであった。
しかし、しばらくすると、デメナが自ら沈黙を破った。
「…正式な処分は今週末、魔界の代表者と人間界の代表者の会合を通じて決定されます」
「会合…やっぱり、そうなりますよねぇ…」
デメナの言葉に反応したのは、ヴァーレアだった。
昨日、ヴァーレアが拘束されたソロモニアの魔術師達に対し、警告していたことを思い出した。
『…もしかしてキミ達、この一件がまだ、エスカン国内、ひいては人間界内部で解決する問題だと思ってないかい?…残念ながら、もうそんな狭い範囲で収まりはしない。ボクらだけならまだしも、ペルセ様やイアノ姉様にも手を出してしまった以上、魔界側の怒りのツボが、ものすごく刺激されてしまってるよ…』
ヴァーレアはこの言葉を、ソロモニアの魔術師達相手に、冷徹に言い放っていた。その時点でペルセは予想していなかったのだが、ヴァーレアはデメナを含めた魔界上層部が動くことを分かっていたのだろうか。
ソロモニア側はその時、鼻で笑っているだけだったが、それがすでに現実のものとなりかけている。それだけは、政治や外交に詳しくないペルセでも分かった。
「その会合に、あなた達三人を同席させようかと思います。構いませんか?」
デメナのその言葉で、空気が若干張りつめたのを感じ取った。
この件で、何かしら呼び出しがあるかも、とは思っていた。だがまさか、そんな重要な場に呼び出されるなんて、予想していなかった。
「お待ちくださいまし。私達姉妹はよいとして、ペルセちゃんもですの?」
「えぇ。今回の一件の、最大の引き金になっていますから」
イアノの疑問に、デメナは当たり前のことを答えるかのような対応を見せる。
子供である自分が同席して、役に立てるのか。その心配こそあったが、イアノたちが側にいてくれるなら、安全面への心配はしていなかった。
「無論、ペルセさんを議論に参加させるわけではありませんよ。ソロモニア、ひいてはその組織と癒着していたであろうドゥローラという国に対して、相手が何を思っているのか、それに対し自分でどう思うのかを聞くだけです。高尚な意見等は特に必要ありませんので。安心してくださいね、ペルセさん」
デメナはそう言うと、ペルセに穏やかに微笑みかけてきた。ペルセはそれを見て、肩の力が抜けたような気がした。
特に堅苦しいことを求められるわけではないのならば、気楽に臨める。ペルセはそう判断し、静かに頷いた。
「詳細な日程や場所については、本日中にまとめて、イアノさんに伝えますので。イアノさん、今夜またご連絡しますので」
「承知しましたわ、デメナ様」
「では、失礼します」
それだけ言い残すと、デメナは通話を切った。
真っ暗になった画面が、目の前に見える。その画面はもう、デメナを映していなかった。
「…ボクらだけで判断できるだなんて思ってなかったけど…ここまで大規模な話になるとはね…」
「ペルセちゃんや私に手をあげようとした時点で、もはや見えていたことですわよ」
「とにもかくにも、色々と準備しなきゃね。会合まで恐らく数日しかないし」
机の上を片しながら、二人はいつもの日常へと戻っていく。
会合まで、あと数日。ペルセは変わらぬ日常を送り続けるのだった。




