ラウラとデメナの初邂逅
その日の夜。
帰宅したラウラとイアノと共に、リビングの机を囲んでいた。だが、その目的は、食事のためではなかった。
「…準備は、よろしいですわね。つなぎますわよ」
イアノが魔界から持ってきた魔力通信用器具をタブレット状に展開する。イアノならば色々な形を取れそうだが、ラウラの理解に合わせたのだろうか。
そんなことを考えながら画面を見ていると、ノイズのが晴れていく。自分と同じ桃色の髪、そして自分とそっくりなその顔。間違えようがない、愛しい母の姿だった。
「…お母さん…」
思わず、ペルセの口から言葉が漏れる。画面の向こうの母・デメナは、穏やかな表情でこちらを見つめてきている。
相変わらず、安心する母の姿だ。だが今回、イアノはデメナとのんきに通話するために繋いだわけではない。
「デメナ様、聞こえますでしょうか?今、私の顔は見えておりますでしょうか?」
「えぇ、少々ノイズがありますが、見えておりますよ。ありがとうございます、イアノさん」
イアノは画面を覗き込みながら、デメナに確認を取っている。以前、逆の立場でやってもらったことがあったが、こんな舞台裏があったのだろうか。
デメナの返事を聞くと、イアノは画面をラウラの正面に向けた。その画角だと、デメナの方からラウラが映ってる状態になるようだ。
「こちら、人間界でペルセちゃんの保護者をやられてる、エストラの講師のラウラ先生ですわ」
そう言うと、イアノはデメナに語りかける。画面の向こうのデメナは、静かにラウラを観察してるように見える。
「…ラウラと申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ。ペルセさんの母で、イアノさんの上司でもあります、デメナと申します」
そう言うと、二人は互いに頭を下げた。
少しすると、デメナは頭を上げ、静かに口を開いた。
「今回、この場を設けたのは、ラウラさんからお話を直接伺いたいと思ったからです。事の顛末や必要事項そのものは、イアノさんから報告を受け、すでに魔王様や主人にも共有はしております。ですが…この案件、当事者を無視して進めるわけにも、いきませんからね」
デメナは真っ直ぐにラウラを見つめている。その様子に、ラウラの背筋が知らず知らずのうちに伸びているようだ。
「決して、あなたを責めてどうこう、等と言うつもりは欠片もありません。イアノさんからの報告を聞いた限りでは、先に娘へケンカを売ってきたのは向こう側ですから」
デメナはさらに言葉を続ける。
ペルセから見ても、デメナがかなりラウラに気を遣っているのが分かった。
実際、その一言で、ラウラの表情が少し和らいだような気もする。
「あなたとソロモニアの関係、そしてイアノさんの妹でもあるヴァーレアさんとの契約関係。その経緯について…あなたの口から、お話しいただけますか」
デメナは優しく、ラウラに話を促した。
ラウラはその流れに乗るかのように、口を開いた。
「あれは、数百年前に遡ります…」




