↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第九章 エスカンとドゥローラの会合

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
299/400

静かな帰路

 その日の放課後。


 ペルセがミノト達と下駄箱で別れると、校門にはイアノが待っていた。


 昨日の一件があっても、まだソロモニアへの警戒を完全には解けていない。イアノがまだ護衛としている、ということは、その事実も残っている、ということだ。


「…イアノお姉ちゃん」


 普段なら、もっと明るく名前を呼んでいたところだろう。だが、今はそんな無邪気に呼ぶような気分でもない。


 ペルセの静かな呼びかけに、イアノはゆっくりと振り向いた。その表情も、どこか強張っているように見えた。


「ペルセちゃん。帰りましょうか」

「うん」


 イアノはそう言うと、静かにペルセと手を繋いだ。


 日が傾き始めている。この二週間で、ペルセはすっかり、この通学路を見慣れてしまった。あれほどの事件があった後だと言うのに、ウソのように穏やかだ。


 ーーー静かだ。それゆえ、妙に気まずい。

 普段は子供の自分が喋り倒して、イアノがそれを聞く。それぐらいの関係だったはずだ。だが、今は何だか口を開く気になれなかった。


 しばらく、二人は無言で歩き続けていた。

 だが、その気まずさに耐えきれなくなったのか、イアノがゆっくりと口を開いた。


「…ペルセちゃん。今日の学校はどうでしたか?」

「ん?んー…」


 いつも、イアノに聞かれる質問。ラウラは講師でもあるため、この質問をされることはあまりなかった。


 今日の学校は、いつも通りといえばいつも通りだった。授業を受けて、給食を食べて、昼休みにミノト中心にバカをやって、ダリスに呆れられる。そんな、平穏な日常だった。


「…今日も、友達と楽しく過ごせたよ」

「そうですか。それは何よりですわ」


 だからこそ、ペルセもそれしか言えなかった。イアノも、それ以上深くは言及するつもりがないらしく、その一言で話を終えてしまった。


 エストラの学生街ゆえ、色々な店が目に入る。ゲームセンター、スイーツショップ、文房具屋、日用品店などなど、様々な店舗が、今日も運営されている。

 普段は気にもならないその様子が、やけに目についた気もする。


「…皆、今日も止まってないね」


 思わず、そんな一言が出る。


 意識して言った言葉ではない。本当に、知らないうちに口をついて出てきたのだ。


「それが、日常というものですわ。この世界は、私達を中心に回っているわけではありませんの」


 だが、イアノはちゃんと反応をしてくれた。その表情を見ると、何だか少し物憂げなものだった。


「日常…」

「えぇ。私にもあなたにも、守りたい日常があるから、昨日の一件があってもなお、回り続けるこの世界の光景が目につくのでしょうね」


 イアノは静かにそう教えてくれた。


 守りたい日常。魔界にいた時ならば、間違いなくクロニオスやデメナ、ハイーラやマールとの、家族と過ごす時間だった。

 だが、人間界で『友達』というものも知った今、その『友達』であるミノトとのバカ騒ぎも、その中に入っていた。


「…ベルセちゃんの留学はあと約一週間。可能ならば、平穏に終わらせたいものですわね」

「そうだね…」


 沈みゆく夕日を見ながら、二人はそう語り合っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。