技術模倣
イアノはソロモニアの魔術師の軍団と対峙している。
その後ろで、ペルセがラウラを牢獄から救い出している。技巧も何も使わずに拘束術式の魔力を破壊しているが、クロニオス由来の魔力を受け継ぐペルセなら、驚くことでもない。
ーーーラウラの纏っていたあの異常な挙動を示す魔力すらも『制圧』してしまったのには、さすがに驚愕ではあったが。
とはいえ、あの魔力はイアノですらも見たことがない。事が落ち着いたら、ぜひともラウラに話を聞きたいものだ。
「お二人とも、可能なら飛び道具で支援をお願いしますの」
「任せて!!」
ラウラの安全を確認したイアノは、そう声をかける。さすがにイアノをもってしても、この人数を一人で相手するのは、骨が折れる。
だが、後ろにラウラと、そして最強クラスの大砲でもあるペルセがいるなら、話は別だ。
このままペルセを待機させておくことは、本人の意志にも反する。ならば、前には出すことなく、その大砲の性能を存分に活かしてもらうまでだ。
「さて…アナタ達の行った罪の、清算のお時間ですわ」
「罪、だと…!?」
イアノはゆっくりと、距離を詰める。イアノの言葉に、ソロモニアの魔術師達は不服そうな声をあげる。
この期に及んで、まだ分かっていないようだ。ならば、分かるように優しく教えてやるまでだ。
「魔界側から見たアナタ方の罪は、大きく三つ」
イアノはそう言うと、静かに指を立てて、きちんと区分分けした説明をし始めた。
「一つ、魔界から一人の悪魔を、私の妹を拉致したこと。二つ、その妹を庇ったラウラさんに危害を加えたこと。三つ、私達をも捕らえようとしたこと」
懇切丁寧に、穏やかに言葉を紡いだ。思った以上に冷淡な声色になってしまったのは、やはり妹であるヴァーレアが被害にあったことによる、怒りもあるかもしれない。
だがそれでも、イアノは怒りを表に出さないようにしていた。
相手が罪を自覚しなければ、それを清算する意味はない。そう考え、優しく諭したつもりだった。
「…それがどうした!!人間界に召喚された悪魔は、使い魔として使われるのが定め!!貴様らがどのような悪魔かなど知らぬ!!」
そう言いながら、再び魔術師達は魔力弾を練り上げ、何発もこちらに向けて撃ってくる。
相手の魂魄の揺らぎから見える感情とともに、読めていた展開ではあった。対応しようと、イアノは手をかざそうとした。
だが、対応する必要はなかった。背後から白色の魔力が散弾銃のようにまき散らされ、全ての魔力弾を撃ち抜き、霧散させていたからだ。
「…ホントに、成長しましたわね、ペルセちゃん」
思わず、静かにそう呟く。
十年前のあの時。リドン達の軍勢に囲まれ、ペルセの感情メーターが振り切れ、想定外の実戦になったあの時とは違う。
今回は、本人が望んだ実戦で、成長を確認できているのだ。こんなの、喜ばないわけがない。
「くそっ!撤退だ!このままでは…!!」
「とはいえ、人間界に来た収穫は、ありましたわね」
イアノはそう言うと、自身の魔力を紐状に伸ばし、その場にいる全員の足へ、魔力をフックのように引っ掛ける。足を動かせないため、情けなく転ぶ魔術師も何人かいたが、そんなものは気にもならない。
「アナタ方の作られた拘束術式、あの魔力鎖は大したものですわ。私が大の男をこれだけの人数相手取ってもなお、拘束が可能なのですもの」
先程解析した魔力鎖に、少しばかり自分なりの簡単なアレンジを加えて、ひっかけたに過ぎない。ぶっつけ本番ではあったが、上手くいったようだ。
イアノは鎖を辿り、魔術師達を強引に自分の元へと引き寄せていった。




