拘束術式破壊
「な、なんだ…」
「今、何が起こった!?」
ソロモニア側も、明らかに戸惑っている。
だが、それはそうだろう。ラウラですら何が起きたのか、完全には分かっていないのだから。
先程ラウラは、言ってしまえば腕ずくで拘束を無理やり緩め、その隙間から抜け出すような形で拘束から逃れた。
だが、ペルセのものは明らかに違う。解析もしていない。力をかけてもいない。ただ、ペルセは魔力を放出しただけにしか見えない。
ーーーにも関わらず、拘束術式の魔力そのものが完全に無力化されてしまっていた。
しかも、その魔力はペルセの周りだけにとどまっており、すぐ隣のイアノにすら届いていない。そのことから、感情的に暴走させているわけではないことも分かる。
「お姉ちゃんの言った通りだったよ!お父さんからもらったこの魔力、人間界でも通じた!」
「ふふ、よかったですわね」
そんな異常を起こしたペルセは、未だに拘束されたままのイアノに向けて、無邪気に声をかけていた。イアノはペルセに対し、穏やかに微笑んでいた。
「まぁ少しお待ちください。もうすぐ『分解』が終わりますから」
ーーー何と言ったのか。
聞き間違いでなければ、分解が終わる、と言ったのか。ラウラですら、解析こそできても分解することはできないほどの、強固な拘束術式だというのに。
「ハッタリを…っ!!」
ソロモニアはそんなイアノの言葉を受けて、激昂してイアノに魔力弾を放たれた。
まずい。直撃してしまう。ラウラは何とかして、必死に自身を閉じ込める拘束術式を破壊しようと試みる。だが、やはり力でどうにかなるほど脆いものではなく、解体するにしても、あまりに複雑過ぎて解く事など、ラウラには不可能だった。
「くっ…開かない…っ!!」
「硬い…!!」
ラウラとヴァーレアは魔力の出力をさらに引き上げ、何とかこじ開けようとしていた。だが、ビクともしないとまではいかずとも、ラウラが通れるような穴が開くことはなかった。
「お姉ちゃん!!」
その射線上に、白色魔力を纏ったペルセが割り込んだ。そして手を突き出し、飛んでくる魔力弾に手を触れた。
その瞬間、魔力弾はやはり、ペルセの魔力の前で存在を許されなかったかのように、砂のように儚く消えてしまっていた。
ーーー受け止める必要すら、ないというのか。同じ魔力を使用する者として、決して敵に回したくない相手だ。
「…全く。誰に似たんでしょうかね」
呆れたようにイアノが呟いている。だが、イアノを拘束している鎖に、亀裂が入り始めていた。
ーーーまさか。
「ま、まずい…!!」
「どうした!?」
「拘束術式が…魔力鎖が、『解体』されてます!!」
「なに!?」
ソロモニアの魔術師達はもはや、大パニックに陥っている。何百年とかけて研究と改良を重ねてきたであろう拘束術式を、ペルセの未知の魔力で破壊された上、イアノに解体されそうになっているのだ。当然のことだろう。
「…針の穴ほどの、わずかな綻び。普通なら気付かないでしょうね。ですが…」
イアノは静かにそう呟く。だがその反面、拘束している魔力鎖はもう、限界を迎えてるようだった。
「私の前では、全くの無意味ですわよ」
そう言うと、イアノを拘束していた魔力鎖は木っ端微塵に飛び散ってしまった。




