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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第八章 ソロモニアとの激突

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痛恨の一打

「て、テメェは…!?」


 ソロモニアの魔術師達の顔色が変わる。ただでさえ夕暮れ時の薄暗いはずれの通りでは、声の主が着用している、きらびやかな黒いドレスはより不気味に見えることだろう。


「アナタ方に名乗るような名前などありませんわ。このような街中で、こんな派手な戦いを起こすような野蛮人に」


 そう言いながら女性ーーーイアノは、ゆっくりとソロモニアの魔術師達に近寄ってくる。よく見ると、その隣には肩を怒らせながら歩いているペルセの姿もあった。


「ど、どうしてここに…」

「帰りが遅いので、様子を見に来たんですわ」


 ーーー余計な心配をかけさせてしまったのか。ラウラは思わず肩を落としてしまった。


 イアノはさらに、ラウラに近寄ろうとした。その瞬間だった。


 ラウラを拘束しているものと同様の拘束術式が追加でもう一つ、イアノとペルセの周りに展開されてしまった。鎖がイアノたちに巻き付き、二人を拘束してしまった。


「バカが!!油断したな!!拘束術式が一つしか展開できないとか思ってたんだろ!」

「なっ…!?」


 二人の不意をつく形で、ソロモニアの魔術師達は二人を捕らえることに成功したためか、大きく高笑いをし始めた。特にペルセを拘束できたことが大きいようで、ペルセを指さして笑っていた。


 ーーーなんてことを。

 ペルセを、エストラでの自分の生徒を、留学生をバカにするなんて。到底、許されることではなかった。


 だがその反面、イアノは冷静だった。不意を突かれたようにしか見えないのに、それでも異様に落ち着いている。


「…なるほど。この術式で、かつてあの子を…」


 まるで、予め来ると分かっていて、それでもあえて受けたかのような、そんな反応だ。


 だが、イアノの呟きは、エストラの魔術師達には聞こえていない。イアノたちの拘束空間に魔力を流し、魔力弾を空間内に乱れ撃ちする準備をしていた。


 二人が拘束されている空間内に、いくつもの砲台が展開される。


 ーーーまずい。早く、助けなければ。だが、ラウラをもってしても、この空間魔獣の解析は容易ではない。未だに起点を、突破口を見出すことはできていなかった。


「うわ!!ヤバいヤバい!!魔力弾が来ちゃうよ!」

「仕方ありませんわね。これは正当防衛。魔力で防御しますわよ」

「うん!じゃないと危ないもん!!」


 さすがにペルセは慌てている。だが、その慌て方も何だか違和感がある。

 事前に打ち合わせでも済ませてきているのだろうか。


「くらえ!!発射!!」


 ソロモニアの魔術師達がそう叫ぶと、一斉に魔力弾が、拘束された二人に向けて連射される。あの数を受ければ、ラウラの生身ではとても受けきれない量だ。


 だが、ペルセが防御のために、全身から白色の魔力を出した途端、その場の空気が大きく変わった。


 白い魔力はペルセの体を中心に渦を巻いて立ち昇っている。それだけでも異様な光景だ。

 ーーーだが、何より異様だったのは、その白い魔力の前で、ソロモニアの男達が発した魔力弾はおろか、拘束のための魔力鎖までも完全に消えてしまったことだった。


「…は?」


 あまりに、現実離れしすぎている。ソロモニアの魔術師も、そしてラウラも呆然としていた。


 エストラの実習の授業で、ペルセの魔力については見たことがあった。だが、あの時はごく少量での放出だった。それでも、エストラの備品にかかっていた術式を完全停止にまで追い込んだのだ。


 今回ペルセが出している量は、明らかにその時とは違い、普通の魔力戦闘に使える量だ。それほど膨大な量ではない。


 ーーーそれゆえ、力尽くで破ることは不可能のはずだ。


「これが…『魔王の資質』…」


 以前、ヴァーレアが言っていたことを思い出す。ペルセが父親から受け継いだという、「格の低い魔力の存在を許さない」魔力。その魔力の前では、格の低い魔力は「異物」扱いされ、「制圧」されてしまう。


 ーーー今、目の前にあるのが、それなのか。ラウラはその光景を見つめていた。

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