ラウラの反撃
「がはっ…!」
エストラ学生街はずれ。
そこで拘束されたラウラが、ボロボロにされていた。
可能な限りラウラも回避はしていた。だが、半身が拘束されていることに加え、四方八方から魔力弾がぶつけられるこの状況。
さすがに、全て避けきることはできなかった。
「さぁ、貴様の奪った悪魔を、どこへ隠した!!」
「…ふ、ふふ…この程度で、私が吐くとでも…?」
「貴様…」
だが、ソロモニアの者達は、ラウラを殺そうとはしない。なぜなら、殺してしまえば、彼らが渇望する悪魔ーーーヴァーレアの行方を知る人間は、この世からいなくなってしまうからだ。
ラウラは何とか回避もしつつ、拘束術式の構造を解析していた。おびただしい数の邪魔が入るため、遅々として進んでいなかったが、以前よりも遥かに強固で複雑なことだけは分かっていた。
「…ランちゃん」
すると、精神世界でずっと様子をうかがっていたヴァーレアが、声をかけてきた。それに対し、ラウラは無言で、意識のみを頭の中へ向けた。
「これはもう、腕ずくでやるしかないよ。少なくともこのままじゃ、ランちゃんの体がもたない」
「…それも、そうですね。些か、拘束も鬱陶しくなってきましたし」
ラウラはボロボロになった自身の服をはたいて、ほこりを落とす。自分の皮膚から出てきた血痕もあるが、これはもはや仕方あるまい。
「貴様…!!舐めやがって…!!」
そんなラウラの行動を見て、ソロモニアの魔術師達は激昂したようだ。
ーーー攻撃が、激しくなりそうだ。さっさと、始めてしまうとしよう。
「…いくよ、ランちゃん」
「いつでもどうぞ」
精神世界で、二人がそう合図を取る。そうなったらもう、一瞬だった。
体内で、二人の魔力が混ざり合う。混ざり合った魔力は相乗効果を起こし、変質していく。
ーーーあの時と、同じ。いや、それ以上の出力の魔力。それが翠色の魔力となり、ラウラの体から漏れ出し始めた。
「ぬぅっ…!?」
その魔力を見たソロモニアの魔術師たちが、攻撃の手を止める。白色程伝説的な代物ではないが、翠色の魔力というのも、なかなか珍しいものなのだ。
「私もこの数百年、遊んでいたわけではありません。あなた方はご存じないかもしれませんが、数百年前のあの時放出された異常な魔力が何なのか、どのような条件で出されるのか、そしてどこまでいけるのか…調べるには、十分過ぎる時間が、ありました」
そう言いながら、ラウラは魔力の混合率を上げていく。それに伴い、変異が加速していった。
あの時は、混合した魔力のことについて何も分からなかった。だが、数百年間付き合い続け、データを重ねた今なら、昔よりも分かっている。その裏付けを取るだけの実験を、重ねてきたのだ。
ーーーそして、その運用も。
「ふーっ…」
ラウラが息を整える。翠色の魔力が、拘束されている手足へと集まっていった。
「させるかぁっ!!」
だが、当然ソロモニア側も、黙って見ているわけではなかった。先程までとは比べものにならない密度の魔力弾を、ラウラに向けて放ってきた。
だが、その魔力弾はラウラに届かない。ラウラの放つ魔力が、まるで壁として機能しているかのように、ラウラの目の前で止まってしまった。
「なっ…!?」
「邪魔ですよ…!!」
ラウラが魔力量を上げると、増幅と共に魔力弾がソロモニアの魔術師達の方へと跳ね返ってくる。
「くっ…!!」
辛うじてソロモニアの組員たちは魔力弾をかわした。その魔力弾は、魔術師達のすぐ後ろで爆発したようだ。
「…なかなか、固い拘束ですね…」
ラウラは再び、拘束術式の解析へと戻った。
あの時と同等の魔力を持ってしても、拘束術式はまるでビクともしていない。
数百年間遊んでいただけではない、という点では、こちらと同じなのだろう。
ーーーだが、奴らは気付いていない。自分はまだ、『上限値に達した』とは言っていないことを。
「…強めてみますか」
ソロモニアの魔術師達に聞こえないよう、小さく呟いた。




