勘付いた二人の悪魔
同時刻、ラウラの自宅。
すでに帰宅していたペルセは、イアノとリビングで宿題に取り組んでいた。だが、魔界でも見たことがないのか、イアノもペルセがやっている内容に、少し驚いているようだった。
そんな、穏やかな時間を切り裂くように、強い感情がペルセへと聞こえてきた。
「…ん?」
ペルセは机から目を離し、外を見る。
距離は離れている。だが、多数の強い敵対感情だ。明らかに、尋常ではない。
イアノも気付いたらしく、ペルセと同じ方向を向いていた。
「…イアノお姉ちゃん、聞こえた?」
「ペルセちゃんに聞こえてるのなら、私の気のせいではありませんわね」
やはり、イアノも気付いていたらしい。心なしか、その顔も険しいものになっていた。
「何なんだろう…」
どうしても、気になってしまう。目の前にある宿題に集中することができない。ペルセの手は、完全に止まっていた。
ペルセは魔界での鍛錬を通じて、自分の見知った者であれば、魂魄の観察で個体の識別ができるくらいになっており、そのスキルを生かして探ると、人間界で何度も感じた魂魄が見えた。
「…ラウラ先生…?」
思わず、その者の名前が口をついて出てきた。その一言に、イアノが目を見開いていた。
「それは、本当ですの…?」
「うん、間違いないよ。ラウラ先生が、いる」
ペルセは持っていた鉛筆を机の上に置いた。
ラウラへ、集団から強い敵意が向けられている。
ーーーとても無視することなんて、できなかった。
「…ふむ」
「ねぇ、イアノお姉ちゃん」
「何でしょうか?」
「助けに行きたい」
ペルセがそう言うと、イアノは少し困ったような表情を浮かべた。だが、その理由が分からないほど、ペルセもバカではなかった。
「ですが、ペルセちゃん。これは大人の問題ですわ。行くなら私一人で行きますので、あなたはここで…」
「分かってる。イアノお姉ちゃんならそう言うだろうな、って思ってたよ。でも、このままここで燻ってるのは、納得できない」
予想通りの言葉だった。だが、それでもペルセは譲りたくなかった。
しばらく真剣な表情でイアノを見つめていると、イアノはため息をついてこめかみを抑えた。
「…嫌になるほどに、デメナ様そっくりですわ。その顔も、表情も、頑固さも…」
イアノはぼそりとそう呟いた。
今までも散々、母親に似ていると言われ続けていたが、このような言い方は初めてだった。
首を傾げながらイアノを見つめていると、イアノは何かを諦めたかのような表情でこちらを見つめ返してきた。
「分かりました。ただし、私から離れないように。私の指示で動くようにしてくださいまし」
「…うん」
そう言われ、ペルセは静かに頷く。
この間は、自分がラウラに助けを求めた。今度は、自分がラウラを助ける番だ。ありがた迷惑になるかもしれないが、それでも行きたかったのだ。
家の戸締まりをし、ペルセはイアノと共に、その現場へと向かっていった。




