因縁の再会
日の沈みかけた夕方。
エストラの学生街は、学校が終わった学生達で賑わっている。様々な娯楽施設に、見覚えのあるエストラの学生達が出入りしているのが見える。
そんな中、ラウラは一人で帰路についていた。
イアノがペルセの護衛としてついてる以上、ラウラが仕事を家に持ち帰る理由がなくなったため、ペルセが来る前の業務形態へと戻っていたのだ。
「ねーランちゃん、暇ー」
「うるさいですよ」
頭の中で、ゴロゴロしている様子のヴァーレアが不服そうに声をかけてきた。ラウラは呆れたように言い返す。
道路の中央に近い部分を歩いているため、ヴァーレアが出てこれる反射面がない。そのため、このような場所では、ラウラはあまりヴァーレアと話をしないようにしていた。
しかし、しばらく歩いていると、その賑わいが段々と消えていく。学生街から少し外れた場所に近付いていくので当然のことではあるが、今日は何だか違和感がある。
ーーーあまりに、静か過ぎる。人っ子一人見かけない。平日夕方であるとは言え、これほど静かだったことは一度もない。
「…妙ですね」
「何か静かだねー」
こんな状況であれば、警戒することも当然だった。
どこからか視線を感じる。その違和感を拭うことができなかった。
ラウラは辺りを警戒しながら歩き続けていた。
すると、いきなり周りから、一気にラウラの周辺空間から魔力が張り巡らされる。
「ちぃっ…!!」
展開の範囲が広い。少なくとも、ラウラが咄嗟に移動できる距離ではない。
魔力はその空間内へ、完全なまでにラウラを閉じ込めてしまう。さらに、内部にいるラウラに、無数の魔力鎖も伸びてくる。
「くっ…!!」
咄嗟に、魔力弾を撃つ。だが、ラウラの素の魔力では、ビクともしなかった。
やはり、硬い。ラウラは何とか鎖を回避しようと体を動かす。その結果、完全拘束は免れたが、それでも半身は拘束されてしまった。
ーーーこれはもはや、拘束術式というよりは封印術式に近い。空間ごと、自分を閉じ込めるつもりなのか。
「ランちゃん…これって…」
「厄介この上ない、『あの輩』でしょうね…」
精神世界で、ヴァーレアが戦慄している。だが、それはラウラとて同じであった。
ーーーもう二度と、会いたくなかった。
だが、ペルセに直接接触してきた以上、来るかもしれないとも思っていた。その覚悟は、あった。
「成功だ…ラウラを、捕らえたぞ!!」
そう言いながら、建物の陰から、黒いローブを纏った男達が姿を表す。数日前、そして過去にも見た覚えのある、ソロモニアの一員である証のローブだ。
しかも、正面だけではない。ラウラの背後にも、大勢のソロモニアの団員達がいた。完全に、ラウラを捕らえた空間を取り囲んでいる。
「随分と、手荒な再会ですね」
「裏切者に、穏当な扱いなどするわけなかろう」
一人の男が、心底見下したように言っている。やはり、数百年の月日で世代が何度か交代しても、自分への認識は変わっていないようだ。
「さぁ、まずは返してもらおうか。我々から奪い去った、財産を…!」
そう言うと、男達はツカツカと拘束されたラウラの元へと近寄ってくるのだった。




