ソロモニアの会議
エスカンの郊外。悪魔崇拝組織ソロモニアの支部。
かつてはテナントが入っていたであろうその空間は、今では空室となっており、管理もされていないのか荒れ放題だ。
そんな空間の中で、ソロモニアの幹部達が、エストラへと向かった組員三人からの報告を聞いていた。
「…貴様ら、正常に報告しろ。この案件は、ボスへの、ひいてはドゥローラ国への報告になるのだぞ。ふざけたことを言っていないで、正しいことのみを言え」
幹部の一人が、イライラを隠そうともせず、報告をしている三人に向けて厳しい言葉をかける。
何せ、失敗報告だけなら驚かないし怒る気もないが、報告された中身が明らかに正気の沙汰ではない。あまりに信じがたい報告ゆえ、再度の報告を促した。
「ですから…報告した通りです!奇襲を看破され、魔力弾をその場で解析され!!そして、魂に触ったんです!!」
だが、報告者の言ってることは変わらなかった。
その中身は、あまりに、現実離れをしすぎている。
奇襲を看破。それだけなら、護衛役なのだから感知能力が優れている者を差し向けてきたり、辺りにレーダーを張ったりしていたりしてもおかしくない。相手がそのような対策を取ってても、特に違和感がなかった。
魔力弾をその場で解析。これも異常だが、今回エストラへ送った者達は、所詮は下っ端であり、さほど複雑な術式を組むことはできない者達だ。分析能力が高ければ、あり得ない話ではない。
しかし、魂に触れる。この話だけが、明らかに世界観の違う能力だ。
そんな魔力の扱い方など、聞いたことがない。人間はおろか、今まで捕縛してきた悪魔達にも、そのような能力を持った者はいなかった。
「…その女は、ラウラが雇った護衛か?それとも、どこからか来た悪魔か?」
「わ、分かりません…」
「魔力の質から分かるだろう!」
「分からなかったんです!判定に使えるほどの量を使っていませんでしたから!!」
「何だと…!?」
相手の魔力が人間のものか悪魔のものかくらいは、下っ端であっても分かる。だが、それを判定するためには当然、ある程度の分析力とサンプル量が必要だ。
だが、部下の報告だと、その最低量に満たない魔力しか使っていないらしい。その事実が、幹部の頬に、一筋の汗が流れさせた。
ーーーそんなことが、あるのか。その護衛の女は、何者なんだ。
その事実が、幹部の苛立ちを加速させた。
「…くっそが…!!」
先日、悪魔の子供本人に接触しても、子供の方が明らかに勘付いたような反応を見せ、時間稼ぎをされてしまった。
そして今回、その子供の護衛に奇襲をかけようとしたら、この体たらく。
まるで、こちらの手の内を全て見抜く、難攻不落の要塞を相手取ってるような気分だ。
だが、諦めるわけにはいかない。あの子供と、裏切者のラウラをドゥローラ国へ取り込むことは、ソロモニア、ひいてはドゥローラ国上層部からの勅令なのだ。
「…真正面からいってはダメ。奇襲も効果なし。…それならば、先にラウラ一人を、強化された拘束術式で…!!」
ソロモニアの大幹部が、何か決意したかのように呟く。
身の危険は、確実に迫っていたーーー。




