幼馴染のやり取り
「んんーっ…終わったぁ…」
授業が終わり、ペルセは自席で両腕を伸ばす。ずっと座っていると、腕や肩が凝ってしまう。首を回すと、ポキポキ鳴っている音が聞こえてくる気がした。
「次の授業は…」
ペルセは教室に掲示されている時間割を確認する。だが、ペルセが確認しきる前に、隣に座っていたミノトが声をかけてくる。
「次移動教室だよ、ペルセちゃん!」
「あ、そうじゃん!」
ミノトに言われ、ペルセは慌てて引き出しから教科書と文房具を取り出した。
しかしいざ時計を見ると、全力疾走しなければならない、というほどではない。実際、周りの生徒達の様子も、極めてのんびりとしたものだった。
「じゃあ行くよぉっと!?」
「さっきからうるさいぞ」
今にもペルセの手を握って走り出そうとするミノトの首根っこを、ダリスが掴んだ。同級生を片手で軽々と止められるのは、狼の獣人ならではなのだろうか。
「やー!ダリス下ろしてよー!!」
「静かにしたら下ろしてやる」
「じゃあ下ろすまで騒ぐ!!」
ミノトがジタバタしてても、ダリスはまるで動じていない。まるで飼い猫でも持ち上げてるかのような態度だ。
その光景を見ても、周りのクラスメイトは特に何も言わない。ペルセにとっても、留学に来てから一週間の間で、何度か見てきた光景であったため、もう見慣れたものだった。
最初は色々思うことがあったが、今更何か言う気も起きなくなっていた。
「…ダリス…とりあえず、移動しない?」
「そうだな」
そのため、ペルセはミノトを無視してダリスへと話しかける。ダリスも特にそれを気にする様子はなかった。
「ペルセちゃんまで!?」
「お前の扱い方を分かってきたんだろ」
事実上見捨てられたような立場となったためか、ミノトは愕然としていた。だが、ダリスはそれを見てもケラケラ笑うだけだった。
ダリスとわちゃわちゃしてる時のミノトの態度を、いちいち気にしても仕方ない。それが、ミノトについて学んだことの一つだった。
「さー、とりあえず行くぞー」
「分かった、分かったから下ろして!?自分で歩くから!!」
「下ろしたら騒ぐだろお前」
「さすがにこの姿のままで連行されるのは恥ずかしすぎる!!」
ミノトにそう言われて、ダリスは舌打ちをしながらようやくミノトをおろした。
解放されたミノトは、大きく安堵のため息をつき、ペルセの方を見てきた。
「じゃペルセちゃん、行こっか」
「…ビックリするくらい切り替え早いよね、ミノト」
「ひひひ」
ミノトはクスクス笑いながら、荷物を抱えて教室の出入り口へと向かう。
休日に二人で遊びに行った時も、切り替えの早さに時々驚かされたものだ。
ダリスも同じことを思っていたのか、ウキウキな様子のミノトを見て、頭を抱えてため息をついていた。
「全く…アイツの母ちゃんは滅茶苦茶しっかりした人だってのに、アイツは…」
「アハハハ…」
ダリスの呟きに、ペルセは苦笑いすることしかできなかった。
ミノトの母のことは知らないが、ダリスが言うのならちゃんとした人なのだろう。
「二人とも早くぅー」
「…行くか」
教室の出入り口で、ミノトが呼んでいる。それに応えるように、ダリスとペルセは教室を出ることにした。




