過去話、終幕
現代ーーー。
ペルセはラウラの家で、ラウラの昔話を聞いていた。
思っていたより、大分重たかった。
ソロモニアという組織とラウラの、深い因縁。果ては、ドゥローラという国との因縁まで絡んでくるとは思わなかった。
「…そしてその後、私はエスカンに無事受け入れられ、今ではこうやって、エスカンという国の学校であるエストラ講師として働けてる、というわけですね」
ラウラは一貫して淡々と話を続けている。特に感情を込めることもなく、ずっと落ち着いている。
ーーー明らかに、そんなテンションで話していい中身ではなかったと言うのに。実際、ペルセの隣で話を聞いていたイアノも、驚きを隠せないようで、口元を手で覆って驚いた様子を見せている。
「ですが、ソロモニアはあの頃から、何も変わっていないようです。私もしばらく動向を追っていましたが、私がエスカンに亡命したことで手を出しにくくなっていただけで、何一つ諦めていないですね」
ラウラは少し呆れたようにため息をつく。
ペルセには、不思議だった。
マールのように、心の底で悲鳴をあげ続けていたわけでもない。なのに、こんなに冷静でいられるのは、いったいなぜなのか。
すると、イアノがゆっくりと口を開いた。
「…ヴァーレアを強制的に召喚した一件で、魔界も数百年の間、人間界との交流を閉ざしましたからね。自ら人間界に入った者を捕縛、という形ですらありませんでしたし」
「うん。ボクも、それを後から知ったんだよね。でもまぁ、その時にはランちゃんとの共同生活が楽しかったし」
「ねっ?」と言わんばかりにヴァーレアがラウラに満面の笑みを向ける。しかし、ラウラはそれに対し、ウザったそうな表情を浮かべるだけだった。
「そういえば、ラウラ先生」
「何でしょうか?」
「ラウラ先生って、いくつなんですか?」
その質問をした途端、空気が凍った。
だが、気になってしまったのだ。
ラウラの過去は数百年前の話、ということだった。ヴァーレアは悪魔なので、数百年程度生きてることは問題にならない。しかし、ラウラは人間だ。人間は百年程度しか生きられないと聞いていたのに、目の前にいるラウラは、数百年生きてきた人間だという割には若々しい。
隣に座るイアノが、若干焦ったような様子を見せている。
「ぺ、ペルセちゃん…!お相手は女性ですわ!女性にそのようなことを…」
「構いませんよ。そこも、契約の影響を受けているところでもありますしね」
だが、イアノとは対照的に、ラウラは咳払いをするだけで、特に怒ることはなかった。
「これは推測の部分もありますが、ヴァーレアと契約を結んだことで、私の魔力、ひいては生命力や体質的な部分まで、ヴァーレアのものに近いものによってるようです」
「そんなことあるの!?」
そんな話は聞いたことがない。
だが、ラウラが嘘をついてるとも思えなかった。
すると、ヴァーレアがケラケラ笑いながら声をかけてきた。
「ハッキリした年齢はさすがに言えないけど、少なくとも三百くらいはいってるんじゃないかな?」
「ほぇ〜…」
悪魔としてはそれほど年を取ってる方ではない。だが、人間として見ると、長生きなどというものではない。
「…しかし、今になって動き出すとは…余程、ペルセちゃんの魔力の巨大さに目が眩んだのでしょうかね…」
「多分、そうだろうね。ペルセ様の魔力、ボクよりも格段に強いから」
ペルセが感心していると、イアノとヴァーレアが話を本題へと戻した。ペルセも思わず、姿勢を正す。
そうだった。今は、ラウラの歴史や年齢をゆっくりと聞いてられる状況ではなかった。ラウラの過去に強い因縁があるソロモニアが、自分とラウラを狙ってきている。
だらけてる場合では、なかった。




