ラウラの過去⑬ ソロモニアとの決着と、残る禍根
ーーー予想以上だ。少し、魔力弾を放り込んだだけなのに、屈強な兵士達が、大爆発とともに、まるで塵のように吹き飛んでしまった。
「これは…」
「うわ、こりゃスゴいね…」
当事者であるラウラとヴァーレアでさえ、完全には理解しきれていない。一つだけ分かるのは、今までのラウラとの魔力とは、桁が違うということだけだ。
「く、くそっ!!拘束だ!!拘束しろ!!」
被害を免れた後衛のソロモニアの魔術師達が、一気に拘束術式を展開する。かつてラウラがあの会議室で受け、ヴァーレアが王宮で受けた、あの術式だ。
鎖がラウラの体を締め上げ、さらには空間ごとラウラの周りを取り囲む。相変わらず、見事なまでの拘束だ。
ーーーだが、二度目だからこそ分かる。
冷静になって分析してみれば、綻びは目についた。
前方左上。ソロモニアの魔術師達が、拘束を維持するために、魔力を供給している起点。
普通の人間魔術師なら気づかない、わずかな綻び。だが、長年の研究で目の肥えたラウラには、見えていた。
「…相変わらず、素晴らしい術式ですが…」
ラウラはその起点めがけ、自身の魔力を指先へと濃縮させ、銃弾でも打ち出すかのように魔力弾で狙い撃ちした。
刹那、大きな衝突音と金属音が響き渡る。そして同時に、拘束していた空間が、まるでガラスのように砕け散ってしまった。
「なっ…!?内側から、破られた!?」
「バカな…!!悪魔にも破れなかった拘束だぞ!?」
魔力を流し続けていたソロモニアの魔術師達が、驚愕の声を上げる。
だが、驚くのも当たり前だ。強大な魔力を持っていたヴァーレアでさえ、拘束の中で暴れることはできても、拘束を内側から破壊するには至らなかったのだから。
「スゴ…ボクでも敗れなかったのに…」
「まだまだ、開発精度が甘いですね」
ラウラの頭の中で、ヴァーレアも感嘆の声をあげていた。だが、ラウラはそれにあぐらをかくことなく、狼狽しているソロモニアの魔術師達の元へと歩み寄った。
「…まだ、やりますか?」
「この…泥棒が…!!」
拘束を内側から破られてもなお、諦めていない。それどころか、歯をむき出しにし、怒りで口元を震わせながら睨みつけている。
ーーーそんな彼らには悪いが、一つ伝えて置かなければならない事があったことを思い出した。
ラウラは、静かに口を開く。
「あなたがたが欲しがっていた、あの悪魔ですが…」
「貴様!!どこへ隠した!!」
「…まだ話の途中ですよ」
少し言葉を発しただけで、すぐに食ってかかろうとしてくる。だが、そんな雑音は気にすることなく、ラウラは言葉を紡いだ。
「あの悪魔は本人の意志で、私をマスターとして認識し、私と契約を結び、私の精神へと宿りました。アナタたちであれば、この事実の意味がわかるでしょう?」
そう告げると、ソロモニアの魔術師達は目を見開いている。ちゃんと、意味が伝わってるようで安心した。
ラウラはそれだけ伝えると、踵を返す。だが、ソロモニア側は当然、納得していないようだった。
「待て!!どこへ行くつもりだ!!」
その一言で、ラウラは再び歩みを止める。そして、ゆっくり顔だけそちらへと向けた。
「どこに、ですか…。それは、わざわざこんなトラップを仕掛けたアナタたちこそ、よく分かってるのではないですか?」
そう言うと、ソロモニアの者達は何も言い返せないようだ。
このまま立ち去ってもよかったのだが、国王同様、最後の忠告は行うことにした。
「私はこのまま、エスカンへと亡命します。当然、あなた方のやった所業等については、積極的に公表をする気はありませんが、手続き等で理由を聞かれたら答えますし、説明しますので」
ラウラはそれだけ言うと、再び歩き出す。後ろでソロモニアの連中が何か喚いているが、聞く気もない。
そのまま、エスカンへ向かって歩いていったのだったーーー。




