ラウラの過去⑩ 逃亡生活
数日経ち、ラウラ達は外へと出た。
地下の研究室の真上は、ドゥローラの中でも最果ての地であり、早々人が来ることがない場所だ。
そんな場所であるため、商店街は軒並みシャッター街となっており、控えめに言っても寂れた街だ。
ーーーだが、そんな街でも、とある見慣れないポスターが貼り付けられている。
「…手が早いですね」
それは、ラウラの顔写真付きの指名手配ポスターだった。それ自体は想定していた。だが、ラウラが直接国家に反旗を翻したからか、予想以上に手回しが早い。
「これ…ラウラの…」
「国家の威信にかけて、私を捕らえようとしてきてますね」
ローブで顔を深く隠した二人が、そのポスターを眺めている。通常ならそれだけで通報されそうだが、浮浪者も多いこのエリアでは、それもあまり問題視されない。
「一先ず、隣国のエスカンという国に行きます。ここからですと三百キロ程度離れているので、一ヶ月程度で到着できるでしょう」
「遠っ…」
「仕方ないでしょう。国内にはいられませんから」
ラウラはそう言うと、そのまま歩き出した。ヴァーレアもその後を追いかける。
幸いなことに、ドゥローラと隣国のエスカンは陸続きだ。さらに、国家研究者であったため蓄えがあり、それゆえ身分を隠して宿を取り続けるだけの資金も潤沢であり、それもこの数日で、全て自分で使える状態にしてある。
そんなキッカケで始まった二人の逃亡生活は、波乱の連続であった。
ヴァーレアはまだしも、ラウラは特に身体能力が高いわけでもない。にも関わらず、一日数キロと歩く必要があるこの旅では、比較的早いタイミングでバテてしまい、強制中断させられることも少なくなかった。
その際には早々に宿を取ったり、最悪そこで野宿をしたりでやり過ごしていた。
しかもそれに加えて、時折ドゥローラやソロモニア側からの追っ手がやってくることもあり、襲ってくることもあった。
ヴァーレアがまだ本調子でないことに加え、ラウラも正面戦闘が得意でないこともあり、ひたすら逃げに徹することしかしなかった。
だが、その逃亡の間で、ラウラはヴァーレアのことを確実に知ることができていった。
ヴァーレアは魔界の中でも上澄みの生まれであること、そしてその生まれに応じた教育を受けてきたこと、家を継ぐ姉がいること、自由奔放に生きてきたこと等を少しずつ話してくれるようになった。
だが、一ヶ月ほど経過し、もう間もなくドゥローラから出国できるというところまで来た時に、最大の危機が訪れてしまう。それが、二人にとっても最大の転機になるとは、誰も予想していなかったーーー。




