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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第七章 迫りくるラウラの過去

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ラウラの過去⑧ 国王への忠告

 今、何と言ったか。自分の聞き間違いでなければ、悪魔の退路は既に断たれている、と言ったか。


 もしそれが本当ならばーーー国王もソロモニアも、あまりに悪魔を軽視し過ぎている。


 ラウラはかつてないほどに冷たい視線を、国王に送る。だが、それに対して国王は嘲笑っていた。


「お前はもう魔界に帰ることはできん!最初から私に従うしか道は残っていないんだよ!!」


 国王は臆病ではあるが、理性的な人物だと思っていた。だが、今やその評価は適切ではない。


 ーーーいや、極限状態で本性が現れた、というべきなのだろうか。自分が政から距離を取り続けてたためか、その本性を把握できなかったことだけが、悔やまれる。


「さぁ、ラウラ…その悪魔を、こちらへ引き渡せ。今ならまだ、お前の命令違反にも目をつぶってやる」


 国王は変わらぬ様子で、手をこちらに突き出す。

 回復させたとは言え、悪魔の方もまだ本調子ではない。ラウラ自身が悪魔の捕縛に協力すれば、この件は丸く収まるであろう。


「貴様とで、我がドゥローラそのものを敵に回したくはなかろう。ましてや、大悪魔を奴隷として複数従えるソロモニアからの援助もある。貴様一人では、反逆しても勝ち目はないぞ」


 ーーー随分と、めでたい頭だ。ラウラは呆れたようにため息をつく。

 だが、その視線を国王から外すことなく、背後の悪魔へと語りかけた。


「…あなた、名前は?」

「え?」

「私はラウラといいます。あなたは?」


 悪魔は変わらず戸惑っている。それも変な話ではない。

 悪魔祓いでは、聖水などで悪魔を苦しめ、悪魔に無理やり名乗らせることで主導権を握り、悪魔を祓うことができる。それゆえ、悪魔が人間に名前を知られることの意味は、非常に重い。


 だがそれは、逆方向からとて同じことだ。悪魔に自分の名前を知られれば、支配されるリスクが格段に上がる。


 ーーー全て、承知の上だった。ラウラは悪魔からの返事を、静かに待った。


「…ボクは…ヴァーレア」


 悪魔は小さく、しかしハッキリとした声で名乗った。小声だったため、国王には聞こえていない。


 ラウラはその意味を、しっかりと受け止めた。そして詠唱を行い、二人の足元に使い捨ての転送陣を敷いた。


「ラウラ、貴様…ッ!!」


 当然、国王もその動きには気付く。しかし、未だに腰が引けたままであり、ラウラのもとに即座に駆け寄ることができずにいる。

 もっとも、仮に来れたとしても、徹底的に妨害していたところだが、手間が省けた。


「ドゥローラ国王陛下。これが私からの、研究者としての最後の忠告です。…力のある者を縛り付け、無理矢理従属させるような関係は、いずれ崩壊し、国の衰退へとつながります。しかもそれは、即座の破滅ではなく、何代もかけての、緩慢な破滅となるでしょう」

「き…貴様ぁっ!!」


 ラウラの言葉を聞いて激昂したのか、国王が勢い良く走ってくる。


 ーーーだが、もう遅い。転送陣が起動し、ラウラ達を赤い光で包み込む。


「私の研究室は、好きに処分してくれて構いません。おさらばです、国王陛下」


 それだけ言うと、ラウラはヴァーレアと共に、転送陣を使用してその場から姿を消したのだった。

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