侵食
ーーーこんなに痛いのは、久し振りだった。
ペルセを庇おうと前に出たら、気付けばこの有り様だ。
「つ、ぅ…!!」
マールは、痛みに悶えながらも、ペルセ達の方へと視線を向ける。
せめて、あの子だけはーーー。
そう思っても、体は言うことを聞かない。恐らく、骨も何本かやられてる。
「欠片も残さず消してやる。ダスノムのゴミが…!!」
男は手を突き出す。そこに、魔力が集まっていく。
空気が、ざわつく。
男の手のひらに、引っ張られてる。
ーーー集まった魔力が、1つの弾となる。
あんなもの、まともに受ければーーーペルセはおろか、自分も、ハイーラの家も無事では済まない。
「だ、め…っ…!!」
痛みを堪えながら、何とか声を出した。しかし、血も混じった喉では、うまく叫べない。
ーーーその時。
違和感を覚える。
ペルセの様子が、違う。
先程まで、痛みに悶えていたはずなのにーーー動いていない。
空気が震えている。
大きく、ざわついている。
違う。
何か、おかしい。
「終わりだ!!消え失せろゴミが!!」
男はそれに気付いていないのか、そのまま弾を勢いよく放った。
ーーーしかし、その弾が、炸裂することはなかった。
弾は、霧散した。まるで、ペルセの周囲が、侵入を拒んだかのように。
ペルセの体からは、明らかにおかしな、白色の何かが漏れている。
あれは、なんだ。
アスティアノでも、あんなものは見たことがない。
「貴様…ッ!!ゴミ風情が…!!」
男は間をおかず、何発も弾を撃ち込む。しかし、その全てが拒絶され、霧散する。
白色の何かが、ペルセの体の周りに渦を作っている。まるで、ペルセを守るかのごとく。
息苦しい。
魔力が充満しているアスティアノでは感じたことがない、息苦しさだ。
空気の、魔力の流れが、明らかに変わっている。
この空間の魔力濃度が、急激に下がっていくのを感じた。
「バカな…!!このアスティアノの魔力が…!?」
男が戸惑っている。その異常性に、気付いたようだ。
アスティアノの魔力は、上位の魔力だ。その魔力が、ペルセの持つ力から、明らかに逃げている。
「貴様…!!何をした!!」
異常。この現象は、その一言に尽きる。
男は現実を受け入れられないようで、ペルセに叫ぶ。しかし、ペルセの返事はない。
ペルセの体で渦巻いていた白い何かが、ペルセの体に纏わりついている。
逃げていった魔力の埋め合わせをするように、ペルセの白い何かが辺りを覆っていく。
ーーー塗り替えられてしまう。
理屈は分からない。しかし、そう感じさせるだけの異常さがあった。
倒れていたペルセが、ゆっくりと、確実に立ち上がった。




