表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二章 上位の町・アスティアノ
26/67

襲撃と再来

 ーーー騒音。


 柵の方から、何かが壊れるような、大きな音が聞こえてきた。


「え…?」


 視線を向けると、柵は破壊されて、元の形から歪んでいる。そして、その向こう側には、一人の男が立っていた。


 男は明らかに、怒っている。その怒りは、自分たちの方に向いてると、直感的に分かった。だが、男には見覚えがない。


 一体、自分達が何をしたというのか。


 それを考えてる間に、男はどんどんこちらに近付いてくる。


 混乱と恐怖で動けずにいるペルセより先に、マールが動いた。


「ちょっと〜、いきなり何〜?ここ、人んちだよ〜」


 さすがのマールも、呑気にはしていられないのだろう。男の前に躍り出て、注意をしようとした。


 ーーーその瞬間、マールが消えた。


 何が起きたか、全く分からない。マールは、どこへ行ってしまったのか。


 マールがどこにいるのかーーーそれは、すぐに思い知らされた。


「がふっ…!!?」


 自分の前にいたはずのマールの声が、後ろから聞こえる。声のする方を見ると、先程まで座っていた机や椅子をなぎ倒し、マールが地面に叩き付けられている。


 ーーーその腹部には、明らかに異常な、殴られた跡があった。


「え…?」


 一体、何がーーー。それを理解しようとしても、ペルセの思考が追いつかない。

 マールは気絶こそしていない。しかし、時折口から血を吐いている。


「マール…さん…!?」

「神聖なアスティアノを穢すゴミを庇うか…所詮は欲を貪る低能なサキュバスだな…」


 駆け寄ろうとしたペルセの動きを、男の声が止めた。


 ーーーこの声ーーー聞いたことがある。

 忘れるはずもない、二度と聞きたくなかった声。


『ゴミ山のガキ。せめてもの優しさだ。親父と一緒に、葬ってやる』


 そう言って、オーレンを、自分を、ダスノムという世界ごと、消そうとしてきた、あの悪魔の声ーーー。


「…………ッ!!」


 嫌でも思い出してしまった。

 震えが止まらない。その場から、動くこともできない。


 怖い。

 怖い。

 …こわい…。


「神聖なアスティアノに、ゴミが紛れてんじゃねぇ!!」


 次の瞬間ーーー。

 ペルセの腹部に恐ろしいほどの衝撃を感じた。


 今まで、聞いたことのない、中で何かが折れるような音が聞こえる。同時に、胃から、喉から、何か生暖かい液体があがってくる。


「がはっ…!?」


 気づいた時には、ペルセは柱に寄りかかっていた。

 腹に激痛が走る。遅れて背中にも痛みを感じた。どうやら、柱に叩き付けられたらしい。

 口からは血が溢れ出てきていた。


「ダスノムのガキが、こんなとこにいやがったとはなぁ…!!テメェは、生きてるだけでアスティアノを…いや、魔界を汚しちまう…!!」


 相手の男が、なにか言っている。しかし、痛みで意識が朦朧としていて、聞き取れない。

 口から何かが吐き出される。その感覚で、辛うじて意識をギリギリ保ち続けていた。


「ダスノムってのはな!!『存在』が罪なんだよ!!」


 もはや、相手の声も、ほとんど聞こえない。

 聞こえてくるのは、自分の内側の声だけだった。


 怖い。

 怖い。


 何で。

 どうして。

 私が。

 オーレンさんが。

 マールさんが。


 どうして、こんな。


 ただ、生きていただけなのに。


 ーーーどうして。


 そうしている間も、体は、動かない。

 感じるのは、強い痛みだけだった。


 自分の声だけが、やたらと頭に響く。


 ーーー私は、いけない子?

 ここにいるだけで、怒られる子?


 ーーー違う。

 マールさんや、ハイーラさんは、受け入れてくれた。

 特に、マールさんは。

 自分の生まれを知っても、なお受け入れた。


 ーーー生まれなんて、関係ないーーー。


 こんなのでやられるのは、納得がいかない…!!


「欠片も残さず消してやる。ダスノムのゴミが…!!」


 その声が、頭の奥に響く。


 オーレンさんも、マールさんも。

 私のことを、何も言わずに受け入れてくれた。


 そんな二人を。

 ただ、ダスノムに関わっただけで。

 あんな目に。


 ーーー許せない。

 許せない。


 …………許せない!!!!


 ーーーその感情と同時に、自分の内側から、何か湧き出てきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ