ラウラの過去② ソロモニアのプレゼンテーション
定刻五分前に、会議室の扉がノックされる。
その音に反応し、召使いが慌てて扉を開いた。その中には、黒いローブに身を包んだ複数人の男達がいた。そのローブには、赤い逆五芒星に、ところどころに赤い線の入ったヤギの頭という、特有のエンブレムが刻まれている。
一目で分かる。これは、悪魔崇拝者の集団だ。
このご時世のドゥローラでは、そこまで珍しいものではない。
ーーー今回の話は、あまり面白くなさそうだ。どうせまた、ろくでもない儀式であるとか、意味の分からないものを売りつけに来たであるとか、その辺りが関の山だろう。
国王も臆病が過ぎる。このような意味の分からないことをほざく集団の話さえも、反乱を起こされたくないからという理由で聞いてしまうのだから。
「国王様。この度はお時間をいただき、ありがとうございます」
「構わん。えー、ソロモニア、だったか。貴様らは、何を私達に教えてくれるというのだ?」
「はい。まずは、資料を配布いたします」
ソロモニアの連中はそう言うと、会議室内に座る者達へ、それぞれ紙の資料を手渡していく。
それを受け取り、中身を見る。
『高位悪魔強制服従召喚の儀』
その文字を見て、ラウラは顔をしかめる。
百歩譲って、召喚するだけならいい。強制だの服従だの、というのはどういうことなのだろうか。
ラウラは少し疑惑の視線を向けながら、ソロモニアの連中の言葉に視線を向ける。
「悪魔召喚の儀式がこの国に広まって、それなりの年月が経ちました。当然、召喚するにあたり、人間が生命力を吸われた末に殺されたり、召喚に失敗して酷い末路を辿ってしまったり、はたまた、召喚した悪魔が言うことを聞かなかったり、様々な事件が起きてきました」
ボスと思われる男が、両手を広げて語り始める。
確かに、悪魔召喚については成功した事例もあるが、その末路は大体酷いものである。仮に召喚できなかったとしても、悪魔の魔力のみを受けてしまい、廃人になる例も散見されている。
だがその反面、悪魔の力を借りてとてつもない写本を書き上げたりするなど、多大な功績を挙げてるものも稀に存在しているのも事実。ゆえに、多くの人々は悪魔の力を借りたがっているのだ。
「ですが!もし、高位悪魔の力を抑え込めて、かつこちらの意のままに操ることができるとしたら、どうでしょうか?」
「…何?」
「資料の三ページをご覧ください」
そう言われ、国王もその場にいた幹部全員が、資料をめくる。そこには、契約の具体的な術式と、抵抗を抑えるための拘束術式の詳細が記されている。
ーーーしかも、実証実験のデータも複数ついている。
「我々はすでに、その手法を確立しています。情けないエクソシスト共が手も足も出せなかった強大な悪魔を相手取っても、これらの術式は適用できたのです」
資料に書かれてる実証実験のデータの対象悪魔を見ても、確かにラウラでさえ噂で聞いたことがあるような大悪魔の名前が載っている。
すると、国王が口を開いた。
「…待て。この拘束、リスクはないのか。相手の抵抗等で、周辺が壊されるなど…」
「ございません!…と言いたいところですが…」
国王の質問に対し、ソロモニアの男は一度言葉を切った。やはり、ノーリスクではいかないらしい。資料を見ても、それは明らかだ。
「実を言いますと、拘束を破壊しようと暴れられるリスクは当然、あります。ですが、ここは術者の腕の見せ所ですね」
そう言われ、ラウラはデータの中にある、拘束破損率の部分に着目した。
同じ術式であっても、それを組んだ者によって拘束の強さがかなり変わるらしい。それ自体は、ラウラも理解できた。
ーーーだが、それと同時に、疑問が湧き上がってきた。気付いたときには、ラウラは挙手していた。




