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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第七章 迫りくるラウラの過去

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一進一退の攻防

 ペルセは人の多い棚の付近からそれほど大きく動かないようにしていた。


 だがそれでも、負の感情の発生源となってる人物は、戸惑いながらも動きを完全には止めていない。ペルセがそちらへと意識を向け続けているからか、それすらも言葉にならない『声』として聞こえてくる。

 ーーーデメナから受け継いだ感知能力は、あまりにも便利すぎる。鍛錬していた時も思っていたが、改めてそう思った。


 だが、タイミング悪く、昼休みの終わりを告げるチャイムの音が、図書館に鳴り響く。そのチャイムが鳴ると同時に、周りが一斉に動き出す。


 ーーーまずい。人目が一気に少なくなる。


 周りにいた生徒達が、急ぎ足で図書館から出ていっていく。その生徒達とすれ違うように、悪意はどんどん近寄ってくる。むしろ、近寄るスピードが上がっている。


「…ラウラ先生」

「なんですか?」

「場所を、変えます。図書館横の、中庭に」

「はい!?」


 ペルセはそれだけ言うと、一部の生徒達に紛れ、図書館の隣にある中庭へと移動していった。


 さすがに、ペルセとて室内で派手に事を起こす勇気はない。外であればまだ、人目があるはずだ。そう思い、ペルセは外へと移動することにした。


 外に出たペルセが図書館の方へと意識を向けると、相手はどうやらペルセを見失い、焦っている。その感情までも、手に取るように分かってしまう。


 その様子を眺めながら、ペルセは中庭にある大きな木の陰へと隠れ、図書館側から見えないようにした。


「…授業に遅れちゃうなぁ…」


 時計を見ながら、そんなことを考えていた。

 実際、自分の感知能力で危機を察知しただけで、誰かに共有しているわけではない。恐らく、他の先生からしたら遅刻扱いになってしまう。


 ーーーあとで、大人しく怒られるしかない。


 すると、相手の方に動きがあった。どうやら、ペルセが中庭にいることに気づいたらしい。


 ずっとこの状態でいられるとは思っていなかったが、相手の手元を見ると、探知機のようなものを持っている。以前、授業の中で魔力探知機のようなものがある、とエストラの先生が言っていたが、本当だったのか。


 どうやらペルセの魔力を感知したらしく、中庭へと出てきて、こっちに真っすぐ向かっている。


 開けてる場所とは言え、昼休み時よりも人目は少ない。相手に、迷いはほぼなかった。


「…ありゃー…探知機まで持ってるのかー…」

「探知機!?…くっ、急がないと…!!」


 何気なく呟いた独り言も、ラウラに聞かれてしまう。焦らせるつもりはなかったのだが、ラウラは舌打ちしながら、全力疾走を続けてるようだ。


「…そこのお嬢ちゃん、ちょっといいかな?」


 ペルセの背後から、ねっとりした男の声が聞こえてくる。


 男は、エストラの用務員の格好をしている。何もなければ、特に警戒することなく対応しているところだろう。

 だが、その裏側は、ペルセにしか分からない、凶悪なほどの悪意で満ちている。どうしても、無警戒で対応することはできない。ペルセは、振り向くことさえしなかった。


「もう、昼休みは終わったよ?教室に戻ろうか。君は、どのクラスだい?」

「…知らない人についていってはいけない、と教わってるんで」


 息をするように、優しい声をかけてくる。

 だが、ペルセは全く揺らがない。例え背格好が知り合いに似てたとしても、奥にある本心、さらに言うなら生命力までは偽装できない。

 ましてや、今回は完全に見知らぬ大人だ。ペルセ自身、応答するつもりは全くなかった。

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