休暇の終わり
「いや〜…楽しかったね」
「うん、楽しかった」
空を見ると、すでに日が傾いてきている。この一週間で何回も見たが、魔界では見たことがない、少し赤みがかった空の色だ。
ゲームセンターから出た二人は、そんな空を眺めながら、最初の集合場所だった公園へと歩いて向かっていた。
今日はミノトに連れ回され、なかなか疲れた。だが、隣を歩くミノトは、まだまだ元気そうだ。
ーーーミノトの体力は、底無しなのか。その様子からは、若干の物足りなさすらも感じ取れる。
「…ミノト、疲れてないの?」
「んー?まぁ…でも、まだ物足りないよ!門限なかったら、もっと遊びたかった!!」
ーーー恐ろしい。
同時に、門限を設けたミノトの保護者は正解だ、と思ってしまった。
それと同時に、ふと気になることが出てきた。
「…そういえば、ダリスともこういう風に遊んだりするの?」
「ん〜…ダリスは男の子だし、狼の獣人だからなぁ」
ダリスとのことについて何気なく尋ねてみたら、返ってきたのは意外な返答だった。ミノトは性別や種族を気にするようなキャラには見えない。
だが、ミノトはペルセの様子をあまり気にせず、言葉を続けた。
「今日ペルセちゃんと行ったところには、連れて行きにくいかなー。狼だからウサギとはふれ合いにくいし、甘いの好きじゃないし…」
「あー…」
確かに、そう言われてみると納得だ。
肉食である狼が相手だと、ウサギは怯えてしまうかもしれない。エストラでも、ダリスはデザート等を食べておらず、基本は肉を食べているだけだった。
「プリクラはできるけど、ああいうのって男の子は恥ずかしがるからね」
「…そういうものなの?」
「可愛く撮られるのは、あまり好きじゃないみたい」
ミノトはそう言いながら、少し困ったように笑う。どうやら、ミノト自身もよく理解していないらしい。
ペルセはふと、今日撮ったプリクラ写真を眺める。
色合いは地味目のものにはしたが、全体的に可愛らしい雰囲気だ。確かに、これを実父であるクロニオスと撮りたい、と言っても、間違いなく誘いに乗ってくれないことが、容易に想像ついてしまう。
「だから、ペルセちゃんと撮れて、私すっごく楽しかったよ!!」
「…そっか…」
ミノトは再び、嬉しそうに声をかけてきた。その笑みを見て、ベルセも小さく微笑んでいた。
そんなやりとりをしていると、最初の集合場所にした公園へと到着してしまった。
ーーー終わってしまう。名残惜しい。
散々振り回されてきたが、その思いがペルセの中に芽生える。だが、それはミノトも同じだったようで、寂しそうな顔でペルセを見つめてきた。
「うぅ〜…門限…門限がもっと長かったら…」
「しょうがないよ。お母さんに、心配かけたくないでしょ?」
「そうだけど…」
寂しいのはお互い様のようだ。だが、親にいらぬ心配をかけさせることは、本意ではない。
何よりもーーー
「また来週、エストラで会えるよ」
まだ、ペルセの留学期間は二週間残っている。だから、まだ学校で会うことができる。
そう思い、ミノトに声をかけると、ミノトはパッと明るい表情に戻った。
「…そうだね。また来週、会えるもんね!」
「うん。そうだよ」
ミノトはそう言うと、ペルセから少しずつ離れていく。どうやら、帰路につくつもりのようだ。
ペルセはそれを、特に遮ることもせず、ただ見守っていた。
「ペルセちゃん、じゃあね!また来週、学校でね!」
「…うん!また学校でね!」
ミノトはペルセに向けて、大きく手を振ってきた。それに応えるように、ペルセも手を振る。
一時的な別れ。だが、それは家族と少し離れる、というものとは全く違っていた。
数日後に、友達としてまた会える。その感情は、初めての経験だった。
「…楽しかったなぁ…」
去りゆくミノトの背中を見守りながら、そしてウサギのぬいぐるみを抱き締めながら、ペルセは小さく呟くのだった。




