クレーンゲーム〜ペルセの挑戦〜
その後、ミノトはぬいぐるみを取ろうと二回チャレンジしたが、両方ともアームをぬいぐるみにかすらせることもなく終わってしまった。
「うぅ…」
ミノトはクレーンゲームの前で、明らかに落ち込んでいた。
余程、ぬいぐるみを取りたかったのだろうか。だが、ペルセもぬいぐるみが欲しくなってきていたので、その気持ちは分からなくもなかった。
「…ミノト。私も、やって良い?」
「え?うん、いいよ…」
ミノトに先程までの勢いはない。ペルセが前に出ようとすると、ミノトはすごすごと後ろへと引き下がった。
ペルセは先程までミノトが立っていた場所に立ち、コイン投入口に三百SCを入れた。
すると、再びクレーンゲームが機械音と共に動いた音が耳に入ってきた。
「…これ、もう動かせるの?」
「動かしていいよ!でも、時間制限あるから急いで!!」
時間制限。ミノトは然程気にせずに動かしていたようだが、そんなものがあるのか。
ペルセは、目の前のアームとぬいぐるみの位置を観察し、レバーを前後左右へ動かす。
ーーーこれは確かに、難しい。微妙な調節と格闘していると、ボタンを押してないにも関わらず、アームが下へと降りていく。
「…あれ?まだボタン押してないんだけど」
「じ、時間切れだよ…!」
アームはぬいぐるみに触れはしたが、掴めるような位置には来ていない。空を切った後、元の場所へと戻っていった。
「…時間制限あるなら先に言ってほしかった…」
「ごめんごめん!でも、今の位置いいんじゃない?次もっといけるよ!」
「そう?」
「うん、頑張って!!」
恨めしげにミノトを見つめるが、当のミノトはそんな視線を意に介してる様子はない。むしろ、ペルセを励ましてきた。
「時間制限はどのくらいなの?」
「レバー動かし始めてから六十秒!」
「…分かった」
それだけ確認すると、ペルセは二度目の挑戦をしてみることにした。だがやはり、時間制限があるのが痛い。
二度目の挑戦では、ぬいぐるみの真上に近い場所にアームを持ってくることこそできたが、微調整する前に、アームは無慈悲に下へと降りていった。
「あ〜…!もうちょっと!!」
後ろでミノトが悔しがっている。だが、ペルセの中で、然程悔しさはなかった。
確かに、もうちょっとではあった。時間がもう少しあったら、違ったかもしれない。
ペルセは三回目の準備をしながらも、頭の中で、鍛錬の時にアモディエナやデメナから言われたことを思い出していた。
『お前の魔力は、お前の意のままに操れる。特定の場所のみに集めたり、その逆も然り、だ。それを行うためには、まず位置を正確に認識すること。どのくらいの距離、高さ、そして奥行き。認識する術はいくつかあるが、まずは目視で認識してみろ。そしてその位置に、魔力を集中させてみろ』
『上手く認識できるようになれば、空間ですらなく、もっとピンポイントでそれができるようになりますよ、ペルセさん。例えば、私の胸元の中心部であったり、私の眉間を狙い撃ち、といったこともできますよ』
ペルセは意識を鍛錬の時と同等に集中させる。アームの位置、ぬいぐるみの位置を、三次元的に認識する。感覚ではなく、目で見える情報で。
アームを動かし、正確に真上に持ってこれるよう微妙な調節を行う。そこに、迷いはなかった。
「…ここ」
ペルセは位置調節を終えると、ボタンを押した。アームが無機質に、下へ降りていく。そして、ぬいぐるみをしっかりと掴んだ。
「つ、掴んだ!?ペルセちゃんすごい!!」
ミノトが後ろで驚いた声をあげている。だが、ペルセは冷静にアームの動きを見ていた。
アームはぬいぐるみを掴み、元の場所へと戻っていく。掴む力はそれなりに強いらしく、落とすような気配を見せない。
そのままアームが開き、取り出し口にぬいぐるみが落ちていったのだった。




