初めてのケーキとココア
皿に乗ったケーキを、ペルセはじっと見つめる。
白色のクリームが、黄色いスポンジのようなものにかけられている。そしてその上には、真っ赤なイチゴが乗っていた。
イチゴそのものは知っている。だが、それ以外のものは魔界では見たことがなかった。
そして、飲み物の方へ目を向ける。確か、ミルクココアと言っていた。その独特な香りが、ペルセの鼻をくすぐった。
「ペルセちゃん、どうしたの?食べないの?」
目の前にいるミノトは、すでにケーキを頬張っている。口の周りに、ケーキの欠片がくっついている。
「いや…これが、ケーキ?」
「そうだよ!早く食べよ!甘くて美味しいよ!!」
「う、うーん…」
不思議そうにしているミノトに、何だか自分の感覚が間違ってるかのような感覚に陥る。
ペルセはフォークを握り、ケーキを切り分け、口の中へと運んだ。
ーーー甘い。でも、美味しい。
大量に食べたいものではないが、時々なら食べたくなるような味だ。
「…甘い」
「でしょ!?ここのケーキ、ホントに美味しいんだよ!!」
ペルセは少しずつ、ケーキを切り崩し、欠片を口に運んでいく。ミノトほどにバクバクとはいけないが、ペルセも次から次へとケーキを食べていく。
ペルセが半分ほど食べ終わる頃には、目の前にいるミノトはケーキを完食しきっていた。相変わらず、ケーキの欠片が口周りに多量にくっついている。
「…ミノト」
「んー?」
「口周り、拭かない?いっぱいついてるよ?」
「…お母さんみたいなこと言うねー」
ケーキを少しずつ食べながら、ペルセはミノトに話しかける。ミノトはそれに対し、少し不満そうにしながらも、机に備え付けられているティッシュペーパーを手に取り、自身の口周りを拭いている。
ーーー昔の自分も、あんな感じだったとハイーラから聞いている。とはいえ、自分もそんなに綺麗な食べ方をできているとは思っていない。
ペルセはそんなミノトを見ながら、ココアの入ったカップを手に取り、一口含んだ。
こちらも、今まで飲んだことのないような、独特な味わいだ。甘さと、その中に別の味が混ざったかのようなものだった。
何より、食べているケーキに抜群に合っていた。
「…人間界の子って、こんなものを飲み食いできるの…?」
「毎回じゃないけどねー。こういう甘いのを食べるのも、『遊び』になるよ!」
魔界にはない、甘い食べ物。これを、特に制限もなく食べることができるというのか。
ーーーこれも、魔界と人間界の差なのだろうか。
「あ、そうだ。お金、先にまとめとこう!」
ミノトはそう言うと、ポーチから財布を取り出した。当たり前だが、ここも無料で食べることはできないようだ。
「えーっと…二人分で、千と三百だから…えーっと、一人分は…いくら?」
ミノトのその発言に、ケーキを食べていたペルセは思わず脱力してしまう。
だが、エストラの授業でも、少し複雑な計算になると、途端にミノトは止まってしまうことがあった。
「…六百と五十じゃないの?」
「え!?もう計算したの!?ペルセちゃん凄い!!」
この場にダリスがいたら、間違いなく呆れながら教えてくれてただろうが、生憎今はいない。そのため、ペルセが代わりに答えるしかなかった。
だが、このくらいのことで、あんなリアクションをするミノトを見て、普段からミノトに振り回されてるダリスの苦労が少し分かった気がする。
「あ、でも急がなくていいよ!別に時間はあるから!!」
「…うん、ゆっくり食べるよ」
ミノトが財布を漁る様子を見つつ、ペルセはゆっくりとケーキとココアを楽しむのだった。




