異世界の技術差
ミノトに引っ張られ、店の前へと連れてこられた。
遠くから見たときもファンシーな店構えだとは思ったが、正面から見ると、よりその印象が強い。
そんな店の展示品を見ると、ケーキやパフェというものを複数種類出してくれるお店のようだ。
ーーーケーキもパフェも、魔界では、見たことがない。ペルセは不思議そうに首を傾げることしかできなかった。
「ね、おいしそうでしょ!」
「あ、え…」
「行こ、ペルセちゃん!!」
ミノトは若干興奮した様子で聞いてくる。だが、その質問への返事も聞くことなく、ミノトはそのままペルセを店の中へと連れて行った。
店内も外見に負けず劣らず、木をベースにはしているが、ファンシーさが随所に見えるような内装だ。自分はそんなに抵抗がないが、ダリス辺りは入るのを嫌がりそうな雰囲気だ。
「いらっしゃい…何名かな?」
「今日は二人だよー!!」
奥から出てきた、若干疲れた様子の若い女性店員をに、ミノトは対照的なほどに元気よく答える。あまりの勢いに、店員さえ若干押されたような反応を見せていた。
「…えーと、じゃああそこの席に座ってもらえるかな?」
「はーい。いこ、ペルセちゃん」
店員が提示してきた席は、外がよく見える、窓際のテーブル席だ。あの席なら、ミノトと向かい合いで座ることができる。
そんな事を考えながら、ペルセはミノトに引っ張られ、席へと連れて行かれた。
ペルセは置かれてる椅子へと腰かけた。座り心地は、よくもなく悪くもなく、特に気にするようなものではない。
外食そのものには来たことがある。こういう場では、メニューを開いてそこかは選び、店員に頼むものだ。そう思い、メニューを探した。
しかし、どれだけ探しても、メニューが見当たらない。テーブルに置かれてるのは、大きな四角い機材だけだ。
「…ねぇ、ミノト」
「ん?」
「これ、どうやってメニュー見るの…?」
やり方が分からなくて戸惑ったペルセは、ミノトに声をかける。ミノトはそれに対し、若干不思議そうにしていた。
「…あぁ、ペルセちゃんこういうの初めてなの?」
「初めて…?」
「このタブレットを使うんだよ。この中に、メニューあるからさ」
すると、ミノトは机の上に置いてある大きな機材ーーータブレットを手に取り、側面のボタンを押した。すると、タブレットの画面が点き、そこに店の入り口で見たようなケーキやパフェの写真が載っていた。
「え…これでできるの…?」
「できるよ。ほら、こうやってスライドしたら、メニューも切り替えられるし…」
ミノトが画面に触れ、流れるように指を横へ動かすと、まるでページがそのまま指に沿うようにスライドしていった。
ーーーこんなの、初めて見る。思わず、食い入るようにその様子を見てしまう。
「でね!このお店、とにかくショートケーキとココアが美味しいんだ!!ペルセちゃん、それを頼むってことでいいかな?」
「へ!?…あ、うん。ミノトに任せるよ」
「じゃあそれで!」
ミノトはそう言うと、慣れた手つきで画面をスライドさせ、操作している。何をやっているのかはよく分からないが、選択はミノトに任せておけば問題ないのだろう。
「良し、これでOK!」
「あ、うん。じゃあ、注文を」
「もうしたよ?」
「…え?」
その言葉に、ペルセは再び止まった。店員を呼ぼうと、挙手しかけた腕が宙で止まっている。
そんなペルセを見て、ミノトはニッコリ笑った。
「この店、便利だよね!注文まで全部タブレットでできるんだよ!」
「えぇ…!?人間界だと、そんなことまで…!?」
「この辺は魔力の町らしいけど、それでも技術の発展もすごいよねー」
ペルセが呆然としている一方で、ミノトは平然としている。
魔界にも鉄道が通ったりはしているが、タブレット等はない。
ーーーこれが、魔界と人間界の差なのか。ペルセは何も言うことができなくなった。




