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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二章 上位の町・アスティアノ
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拭えぬ違和感

 ペルセを寝かせたハイーラがリビングに戻ると、背もたれによりかかり、今にも寝そうな状態のマールが目に入った。


「あ〜、お帰り〜。終わらせたよ〜」

「そ。あんがと」


 ハイーラの姿に気付き、雑に手を振ってくるマールに、ハイーラは雑な返事しか返さなかった。


 食器洗いの出来は、確認するまでもない。

 マールは、面倒くさがりなだけで、別段家事能力が低いわけではない。それは、よく分かっている。


 ハイーラはそのまま、マールの真正面にある椅子に腰掛けた。


「さて…マール」

「ん〜?」


 ハイーラは一息つき、マールの顔を正面から見つめる。対するマールは、変わらぬ姿勢ではあったが、顔だけハイーラの方に向けてきた。


 ーーーこの様子では、あまり長くはかけてられない。


「…いくつかあの子について聞かせてもらうわよ」

「え〜…」


 マールの目をしっかり見据えた。一方のマールは、やはり面倒そうな態度だ。だが、このまま自分が何も知らぬままでペルセを世話するのは、道理に合わない。


「…アンタ、あの子をどこで拾ったのよ?」

「普通に、ベリアスにある私の家の近くにいたんだよ〜」


 …これは想定内の答えだ。

 無類の出不精でもあるマールが、自ら町に繰り出して保護した、というのは考えにくい。そこは予想通りだ。


「…質問を変えるわね。あの子、どこの子なの?」

「それ、生まれを聞いてる〜?」

「質問に質問で返さないの。…で?どうなの?」

「本人はダスノムの生まれだって言ってた〜」

「…え?」


 ダスノム。この魔界のゴミ処理場の名前だ。あんなところで、悪魔が暮らせるのか。

 何なら、その名前を、このアスティアノで口に出すことすら憚られる。

 …だが、ペルセがまともに暮らせてなかったと考えるなら、あの異常な食欲とマナーの無さも、納得はできる。


「あんた、それを分かっててここに連れてきたの…!?」

「言わなきゃバレないでしょ〜」

「そういうことじゃ…!!」


 能天気なマールの態度を見てると、本気で焦ってる自分がバカみたいだ。

 アスティアノでは、存在すらも否定されるダスノム。そんなところから来た悪魔がいると知って、良い顔をする者は、いない。

 酷い場合だとーーー


「ん〜…他にないなら、私寝るね〜」

「…ちょっと待ちなさい!まだ終わってないわよ!」


 早々に抜けようとするマールを、慌てて止めた。油断すると、こういう場からすぐに逃げようとする。それがマールだ。


「…マール、あんたも気づいてるでしょ?」

「何に〜?」

「とぼけないで。…あの異常さに、アンタが気づかないわけ無いでしょ」


 マールはすっとぼけようとしたようだが、そんな物を通すわけがない。軽く触れただけの自分でも気付いたのだ。

 アスティアノでも全く見たことがない、あの異常な魔力に。


「…やっぱり、ハイーラも気付いた〜?」

「えぇ。ただ、完全には出てない。なんというか…蓋が外れかかってる感じね」

「ベリアスでも、大きな魔力乱れを起こしたっぽいんだよね〜」

「…ベリアスだと、アンタがいる時点で乱れっぱなしじゃないの?」


 マールの魔力もベリアスの中では質が違うタイプだ。だから、ベリアスの町は、マールの魔力で乱されっぱなしだ。

 しかし、ペルセの魔力には、それとも違った何かを感じた。自分には扱いきれない。そんな気がしてならなかった。


「…とにかく、注意しなきゃいけないね。何かの切っ掛けであの子の魔力が暴走でもしたら…」

「多分、相当大変なことになるね〜」


 ーーーそれだけは分かった。

 何らかの切っ掛けで暴走させてしまえば、下手をすると家も無事では済まない。


「つか、なんつーもん拾ってきてんのよアンタは…」

「面白そうでしょ〜」

「…はぁ…」


 マールは本当にこの危険性を分かっているのか。相変わらずの呑気さに、頭が痛くなる。

 この心配が、杞憂で済めばよいのだがーーー。

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