感じる違和感ーおかしな魔力ー
「…食べるだけ食べて、寝ちゃったわね。この子」
ハイーラは机に散らかった食べかすを掃除しながら、突っ伏してしまった悪魔の少女を眺めた。
いきなりマールから連絡が来た時は驚いた。ただ来るだけならまぁいいとしても、「子供を連れてくる」とは…。しかも、それが本当だった。
「ホントだね〜」
マールは相変わらず気怠そうに、食器を片付けている。マールだけであれば自分がやってしまうところだが、今回はマールが面倒事を持ってきたのだ。その分の責任を負わせるのは、間違いではないはずだ。
「ったく…そっち終わったら、掃除手伝いなさいよ。この子、かなり食い散らかしちゃってるし」
「分かってるよ〜。そうカリカリしないで〜」
「カリカリさせてんのはアンタよ?…っと、ペルセちゃん、こんなとこで寝てたら、風邪ひくわよ?」
いつも通りだ。…もう、いちいち言い返すのも面倒だ。正直、放っておきたい。
まだなにか言いたげなマールを無視し、ハイーラは寝ているペルセに、優しく声をかけた。しかし、ペルセは心地よさそうな寝顔を浮かべるだけで、何も応えてはくれない。
「はぁ…」
これは、ベッドまで運ばなければならない。しかし、いくらペルセが子供だと言っても、ハイーラ一人の力で、寝ているペルセを抱えるのは大変だ。
ちらりと、マールを見る。だが、マールのことだ。今やってる食器洗いや掃除ですら、かなり渋々なのだ。ペルセを運ぶなんて、やってくれないだろう。元々期待もしてないが。
「仕方ない…」
ハイーラは腕に魔力を流し込み、一時的に自分の腕力を増強した。そして、寝ているペルセを、抱え上げた。
ーーー想像よりも、大分軽い。子供と接する機会が多かったわけではないが、それにしても軽すぎる。
同時に、強い違和感を覚えた。ペルセの内側に、何かがあるのを感じる。
これは魔力、なのだろうか。しかし、そうだとしたら、アスティアノでも類を見ない、おかしな魔力だ。
ーーーマールは、これに気付いているのだろうか。
あれほどの食欲を見せたことにも、関係がありそうだ。そう思いながら、ペルセをベッドへと運んだ。
ーーーハイーラは、ペルセを自分の家のベッドに寝かせた。自分の寝る場所がなくなるが、ソファーで寝ればいいだろう。マールについては、正直床でも寝れそうだから心配はしてない。
「…アンタ、ホント何者なのよ…」
ハイーラはそっと、大量の食べかすがついたペルセの口元を布で拭き取った。
見た目は、完全に少女だ。しかし、明らかに何かが隠れている。自分の知らない、何かが。
しかし、自分でいくら考えても、答えは出ない。恐らく、マールも完全には把握してないだろう。できたとしても、する気は多分ないだろうが。
「…これは、ちょっと話し合いがいるかもね…」
その独り言は、誰の耳にも届かない。
だが、その違和感だけは、残り続けていた。




