ウサギとのふれ合い
恐る恐る、手を伸ばす。警戒されないように、上から降ろさず、可能な限り水平な位置から、ウサギの体に手を近づける。
そしてついに、ペルセの手が、ウサギの体に触れた。
「…わぁ…」
ーーーふわふわしている。
真っ先に感じたことが、それだった。
父や母、ハイーラやマールとのスキンシップは、数え切れないほどにしてきた。だが、この感触は、家族とのスキンシップでも味わったことがない。
しかも、ウサギはペルセが手を触れても、逃げる様子はない。不思議そうにペルセを見つめてはきているが、ただそれだけだった。
何だか、感触が心地よい。ずっと触っていられる。ペルセの手は自然と、ウサギの体を撫でていた。
すると、ウサギがペルセの手に、体を寄せてきた。偶然かもしれないが、ペルセの手をウサギが求めてきてるように感じた。
「…可愛い…」
思わず、声が出てしまう。
可愛いもの自体は魔界にもあったが、それを動物、しかもウサギで思わされるとは、予想外だった。
ペルセは空いた手でも、ウサギの体を撫でる。それでもなお、ウサギは全く逃げようとはしなかった。
自分も、母親にこんな風に撫でられたら、心地よく感じる。だが、母親側もこんな気持ちになるのか。デメナがやけに、自分の頭を撫でたりしてくるわけだ。
「ね?カワイイでしょ?」
ウサギに夢中になっていると、ミノトから声をかけられる。振り向くと、ミノトはどこからか持ってきた人参スティックを持っている。
透明な容器の中に、三本の人参スティックが入っており、ミノトはその中から一本取り出した。
「ミノト…それは?」
「ウサギ用の餌だよ!さっきそこで買ってきた!!」
ミノトは自身の近くにある、少し小さい施設を指している。そこには確かに、「ウサギのエサ販売中」という直球の広告が掲示されている。それによると、ミノトが買った人参スティック三本は、二百SCで買えるらしい。
「ウサギ用の…?」
「うん!こうやって、食べさせることができるんだよ!それもすっごくカワイイの!!」
ミノトはそう言うと、自身の近くにいるウサギの口元に、人参スティックを手に乗せ、そっと差し出した。すると、ウサギは少し匂いを嗅いだ後に、口を小さく動かし、人参をかじり始めた。
「ほぇー…」
「ペルセちゃんもやってみようよ!一本あげるから!」
「え?いいの?」
「うん!その子も懐いてるみたいだし!!」
ミノトはそう言うと、買ってきた人参スティックを一本、ペルセに手渡してきた。
小さい。自分でも頑張れば一口でいけそうなほどに、小さく切り分けられた人参だ。
ペルセはそれを掌に乗せ、自身が先程まで撫でていたウサギの前へと差し出した。
ウサギはペルセの手と、差し出された人参スティックの匂いを交互に嗅いでいるように見える。やはり、少しためらいがあるのだろうか。
だが、そんな心配は無用だった。ウサギは人参スティックを、特に迷うことなくかじり始めた。
「…食べてくれた…」
「そうそう!この瞬間、スゴくカワイイよねー!!」
ミノトに言われ、人参スティックを食べてるウサギの様子を見る。
決して大きくないであろう口をハグハグ動かし、少しずつ人参スティックを食べていく。その様子は、確かに愛らしく見える。
すると、ミノトのいる方向からシャッター音が聞こえてきた。そちらを見ると、ミノトが小さなカメラを構えていた。
「…ミノト?」
「ごめんごめん。つい」
「いや…いいんだけどさ」
勝手に写真を撮られたことを、怒る気はない。だが、被写体になることがほぼなかったので、少し気恥ずかしかっただけだ。
「せっかくだから、ウサギちゃん抱っこしてよ!それを写真に収めたい!!」
「んぇ?…まぁ、いいけど」
ペルセはミノトから言われ、素直にウサギを抱っこしようとした。
だが、それをせずとも、ウサギは吸い寄せられるように、ペルセの膝の上に乗ってきた。これには、ペルセも驚いた。
「わっ…!ど、どうしたの…?」
「あ〜!!可愛い!!」
ペルセが戸惑ってる間にも、ミノトは写真を何枚か撮っている。そんなにたくさん撮って、どうするのだろうか。
だが、不思議と悪い気はしない。ペルセはウサギとの触れ合いを楽しむことができたように思う。
ーーーなお、ウサギがペルセの膝の上で落ち着き過ぎて、なかなか離れてくれなかったのは内緒である。




