ウサギとの邂逅
「ほわぁ…」
施設の中は、自然が溢れている。
高い木等は茂っていないが、広い草原が広がっている。
そして、自分たちと同じように入園した客の足元に、それぞれ数匹のウサギがおり、一部のウサギは撫でられたり、抱っこされたりしている。
ーーー魔界のウサギだと、あんなことをしようものなら、下手をすると指を噛み千切られる。だが、人間達の反応を見てる限り、そんな心配は全くなさそうだ。
「こっちこっちー!!」
「わわっ…!?」
だが、ミノトがそんな悠長に眺める時間を、与えてくれるはずもなかった。さらにペルセの手を引き、ウサギが数匹集まっているところへと連れて行かれる。
だが、ウサギの反応は、大人しいものだった。
急に近づかれて、驚いてはいる。しかし、その場から逃げ出したり、ましてや反撃しようとしてくる個体は、一羽たりともいなかった。
「かーわーいーいー!!」
そんなウサギを見て、ミノトは目を輝かせながら、屈んで一羽のウサギの体に触れている。ウサギの方も、特に抵抗することなく、普通に触られている。
ミノトの反応を見て、ウサギを観察してみる。
ーーー言われてみると、確かに可愛い。こんなにウサギをじっくりと眺めたことなんてなかったが、人間界のウサギはこんなにも愛らしいのか。
「ペルセちゃん、どうしたの?」
そんな事を考えてると、ウサギを膝に乗せたミノトが声をかけてくる。だが、立ち上がる気はないらしく、ウサギも大人しくミノトの膝の上でじっとミノトに撫でられていた。
「いや…私の知ってるウサギとは、大分違うなぁ、って…」
「魔界にもウサギっているの?」
「うん、いる。でも…」
ペルセはミノトの隣に腰かける。すると、一羽のウサギが、ペルセの方に近寄ってきた。
初めて見る悪魔だからなのか、少し興味を持ってるようにも見える。
そのウサギは、ペルセが地面に置いている手の指先に、鼻をひくひく動かしながら、まるで匂いを嗅いでるかのように鼻先を近づけていた。
「…こんなに、大人しくはないかな。それに、人懐っこくもない」
「へー」
ペルセはそんなウサギを眺めながら、独り言のように呟いた。だが、質問を投げておきながら、ミノトは完全に生返事で、ウサギの方に視線が向いていた。
ペルセも、自身に近寄ってきたウサギの方へと視線を向ける。相変わらず、自身の指先の匂いを嗅いでいる。何だか、鼻先の毛が指に当たって、少しくすぐったい。
「…そんなに嗅いでも、何もないよ」
ペルセは優しく、そう語りかける。しかし、ウサギは変わらず、ペルセの指先に鼻を当て続けている。
満足するまで嗅がせるか。そう思い始めたところで、その様子を見たミノトが口を開いた。
「ペルセちゃん、その子触ってみたら?」
「…触る?」
ミノトに言われ、思わず間の抜けた声が出てしまった。だが、ミノトは特に気にする様子もなく言葉を続けた。
「その子、今なら触れそうだよ?」
「…私が触っていいの?」
「もちろん!そういうふれ合いをするための場所だからね、ここ!」
ミノトは自身の膝に乗せてるウサギの背中を優しく撫でている。撫でられてるウサギは、どこか心地よさそうに見える。
あんなふうに撫でれば良いのだろうか。ペルセは恐る恐る、自分の手元にいるウサギに手を伸ばした。




