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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第五章 放課後の大事件

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母到着

 しばらくすると、現場に猛スピードの車が突っ込んできた。

 現場の封鎖を突破することはなかったが、ギリギリのラインで車は止まった。


 白銀の軽自動車。ダリスにとっても見慣れた、ミノトの母親の車だ。その中から、ミノトの母親が姿を現した。

 いつもなら、黒い髪をキッチリまとめ、服装も整った姿をしているミノトの母だが、今は違っていた。慌てて車を飛ばしてきたようで、髪はボサボサ、服も家事をしていた時の、少しヨレヨレになった作業着のままだ。


「ダリス君!!ミノトは!?」

「ちょ、ちょっとなんですか!!落ち着いてください!!」


 規制のテープを乗り越えようとするミノトの母親を、警備隊が慌てて止める。ミノトの母の表情は、鬼気迫るものであった。


 だが、無理もない。規制テープの向こう側には、クマよりも巨大なトロールが、仰向けで倒れているのだ。これだけで何があったのかは、この近辺に住んでる者なら、誰でも分かってしまう。


「…ミノトは無事です。怖かったみたいで、泣き疲れてますけど」


 ダリスはミノトをおんぶし、母親の元へと近付く。相変わらず、ミノトは穏やかな寝息を立てている。

 普段のミノトなら、ダリスにおんぶなんてされたら「もじゃもじゃ!!」とか文句を言ってくるところだろうが、今はそれも聞こえてこない。


 母親はそんな二人の姿を見て、今にも泣きそうな表情を浮かべる。ミノトの一家との付き合いは長いが、そんな顔を見るのは初めてだった。


「ミノト…!!ダリス君も、怪我なさそうで良かった…!!」


 ミノトの母はそう言いながら、ダリスを抱きしめる。落ち着いた印象のあるミノトの母だが、こういうところはミノトとの血の繋がりを感じる。


 ミノトの母はダリスよりも一回り小さく、ましてやミノトをおんぶしてる関係上、その腕は背中まで届かなかった。だがそれでも、そこに強い愛情を感じる抱擁だった。


「ダリス、その人は誰?」


 すると、ダリスの背後からペルセが声をかけてくる。


 ーーーそうだ。ペルセのことは、どう説明すればよいのか。ミノトの母親は、ミノトと自分はよいとしても、ペルセについては当然面識も何もない。


 どうしたものかと考えてると、先にミノトの母親がペルセの方へと視線を向けてきた。


「そ、その子は?…まさか、ダリス君の彼女!?」

「違いますよ!?」


 冷静さを失った反動なのか、普段なら絶対口にしないようなことを言われてしまい、ダリスは思わず声を荒げてしまった。


 とはいえ、ミノトの母親の前では、ミノト以外の女子と話をしてる姿を見せたことがない。そういう解釈になるのも無理はないのかもしれない。そう思うと、思わずため息が出てしまった。


「この子は昨日からエストラに来てる、魔界の留学生ですよ。悪魔らしいです」

「悪魔の、留学生…?」


 お喋りなミノトのことだ。どこまで具体的に話したかはたかが知れてるが、ペルセのことを家族に話してない、なんてことはないはずだ。

 案の定、ミノトの母には聞き覚えがあったようだ。


「お母様」


 気まずそうな様子の警備隊が、話に割り込むように、ミノトの母親に声をかけてきた。ミノトの母親は、慌てて警備隊の方を向いた。


「お子様方を連れて帰っていただけますか?」


 ーーーごもっともだ。ここで立ち話してても仕方がない。


 だが、ペルセをどうする。ミノトや自分については、気軽にお迎えをお願いできる相手だ。だが、ペルセについてはそうでもない。


「その子も、私が」

「その必要はありませんよ」


 ミノトの母親が口を開きかけたところに、学校でも聞き覚えのある、気怠そうな声が聞こえてきた。

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