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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第五章 放課後の大事件

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異常な制圧

 一体、何が起きたのか。

 魔界から来たという留学生を送り届けていたかと思えば、町中に魔獣トロールが現れた。


 それだけでも一大事なのだが、留学生がその魔獣と対峙し始めた。しかも、怯えも見せることなく、襲いかかってきたトロールの顔に、直接魔力を当ててみせた。


「グオォォォォッ…!!」


 顔面に直接魔力を受けて大きく仰け反ったトロールは、顔や口から煙を噴き上げながら、仰向けにゆっくりと倒れた。


 倒れる時の衝撃が、地面を通じてこちらにも伝わってくる。その振動が、ますますミノトを怖がらせてるようで、肩の震えが大きくなっている。


「ペ…ペルセ…!?」


 ダリスの口は、それだけの言葉しか紡げなかった。


 倒れたトロールは、死んではいないようだ。だが、完全に意識が飛んでいる。


 こんなことが起こり得るのか。

 暴れ出したトロールの制圧など、人間だけであれば、大人の精鋭魔術師を数人集めて、ようやくできるかできないかという大規模任務だ。トロールという魔獣は、それほどのタフネスも兼ね備えているはずだ。


 だが、ペルセはそんな魔獣を、あろうことか一発で無力化してみせたのだ。


 何をしたのか。どれほどの力を持っているのか。一体、何者なのか。

 聞きたいことが山のように出てきた。


 だが、それを聞く暇は、訪れなかった。


「退いて退いて!!」


 通行人の誰かが通報したのだろうか。町の警備隊と魔術師部隊がゾロゾロとやってきた。

 完全な戦闘態勢だ。暴れてる魔獣の性質を考えると、当然のことだ。だが、彼らは目の前に広がる光景を見て、絶句してしまった。


「え…?」

「トロールが暴れてるという話では…?」

「すでに、倒れてる…のか…?」


 警備隊の者達が、それぞれ戸惑った様子を見せている。しかしそんな周りの様子を気にすることもなく、ペルセは踵を返し、ダリス達の元へと戻ってくる。

 だが、警備隊の者達が、それを見逃すはずがなかった。


「ちょ、ちょっとそこの君!!」

「…んぇ?」


 警備隊の一人が、ペルセへ声をかける。ペルセは間の抜けた声を出して、警備隊の方を見た。


 先ほどまでの冷静さはどこへ行ったのか。その様子は、再び子供のものへと戻っていた。


「通報したのは君かい!?トロールがいると!!」

「…通報…?」


 ペルセは不思議そうに首を傾げている。それも無理はない。生まれた時から人間界にいるダリスでさえ、通報という制度があることを知ってはいても、使ったことはない。ましてやペルセは、まだ人間界に来て二日目の悪魔だ。


「…あの、お巡りさん」


 恐る恐る、ダリスが声をかける。その声に反応し、一気に視線がダリスへと向く。

 ミノトは腕の中で泣き疲れてしまったらしく、ダリスの腕に抱えられて寝ており、先ほどの光景は見ていないであろう。


「…通報したのは、君かい?」

「いや…通報したのは、俺じゃ、ないんですけど…ここには、いました」


 寝ているミノトの背中に手を添えながら、ダリスは警備隊の質問に答える。


 これから言うことを信じてもらえるのだろうか。自分でも、何が起きたかをハッキリとは咀嚼できていない。


 ーーーだが、ありのままを伝えるしかないだろう。ダリスは警備隊の者達に話をすることにした。

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