ヴァーレアの着眼点
昼休み。
エストラの職員室に、実習を終えたラウラ達が戻ってきた。
少し早いが、実習を早々に切り上げ、生徒達を教室へ返した。幸い、あの時点でペルセ以外は全員実習課題も終えていたので、特に大きく揉めることなく締めることができた。
だが、デスクに戻るエルフィーとラウラの表情は、どこか不可解そうなものだった。
「…さて、ヴァーレア。詳しく聞かせていただきましょうか」
ラウラが自身のデスクの上にある鏡に向けて、声をかける。背後から、その鏡をエルフィーが覗き見ている。
しばらくは二人の顔を写していた鏡だったが、少しするとすぐに、ヴァーレアが姿を現した。その顔色は、未だに青いままだった。
「…今までも、留学生のヘンテコな質の魔力を見たことはあった。ばってん、今回のはあまりにおかしか」
「えぇ…。極小の魔力量で、高レベルの魔力壁を完全に機能停止に追い込むなど、通常の魔力運用では、説明がつきません」
エルフィーとラウラは、純粋に思うことをヴァーレアにぶつけてみた。
おかしな魔力そのものは、今までもあった。魔力を出すだけで、同時に悪臭を漂わせてきたり、なぜだか魔力に体液が混ざっていたりなどだ。だが、それらは使用者本人のクセのようなもので、魔力自体はラウラ達の知る運用理論から外れていなかった。
だが、ペルセの魔力は、その運用理論から大きく外れた位置の挙動を示させている。魔界でも高い階級にいるヴァーレアの魔力ですら外すことのない運用理論から外れている理由。そこが、まるで分からないのだ。
「正直、ボクも驚いたんだよ。白い魔力の時点で、引っ掛かるものはあった」
「…えぇ。白い魔力ですら、理論上の存在でしかない、というのに…」
白い魔力は、純度の高い魔力として『理論上存在している可能性は否定できない』と、ずっと魔力運用を研究する学者の間では提唱されていた。だが、それを生で見れるとは予想だにしていなかった。
だが、ヴァーレアの驚いたポイントは、少し違っていたようだ。
「何であの子、見てくれは完全にお母さんなのに、魔力についてはお父さんを受け継いでるんだよぅ…」
「お父さん、ですか?」
ペルセの両親は、魔界の最高幹部である、としか聞いていない。その片割れの要素を、強く受け継いでる、ということなのか。
一体、魔界の最高幹部とは、何者なのか。
「ランちゃんには軽く話してるけど、ペルセ様は魔界のNo.2であるクロニオス様と、No.4であるデメナ様の間のご息女なんだよ。血統だけで見れば、ボクよりもVIPだよ」
「うわ…そら、スゴか名家のお嬢さんが来たもんや…」
エルフィーにとっては初耳だったのか、口をあんぐりと開けている。
確かに、血筋としては魔界最強かもしれない。だが、それがあの魔力の異質さにどうつながるというのか。
「見た目はホントに、母親であるデメナ様そっくりなんだよ。髪の色も同じだし、顔つきも鏡写しかと思うほど似てるし…」
「さっさと本題に入りなさい」
この悪魔は、こういうところがある。
見た目が母親そっくりだから、何だというのだ。今はそのような話をしていないと言うのに。
ラウラが言葉と視線で、ヴァーレアに圧力をかけると、ヴァーレアは渋々口を開いた。
「…ペルセ様のあの魔力は、クロニオス様由来の…『魔王の資質』、とでも言うべきものだよ」
その瞬間、ラウラとエルフィーは同時に思考が止まった。




