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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第四章 魔術学校・エストラでの暮らし

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異質な破損

 的に張られてる修復魔法壁は、生徒達が無遠慮にぶつける魔力弾を受け止めつつ、破損部位を自動で修復してくれる優れものだ。だが、高性能ゆえ、一度機能が止まると、貼り直すのが面倒な魔法壁でもある。


 だが、エルフィーの反応からすると、ただ不具合で機能停止した、というわけではなさそうだ。これは、自分も見てみた方がよさそうだ。


「ペルセさん、少しお待ちを」

「へ?」


 ペルセは状況をイマイチ飲み込めていないようであるが、それを気にしていられる状況ではない。ラウラは急ぎ足で、エルフィーの下へ駆け寄った。

 その後ろで、ペルセが的のド真ん中を正確に打ち抜けたことに歓声を上げた子供達がいたが、それもラウラの耳には届かなかった。


「…エルフィー先生。完全停止、とは?」

「言葉通りばい。魔法壁の魔力そのものが、かき消されとるったい」


 エルフィーはそう言うと、ラウラに的を差し出してきた。確かに、魔法壁に穴が空いた、とかの可愛いレベルではない。本当に、魔力そのものが全てかき消され、魔法壁そのものがなくなっていた。


 魔力が強大過ぎて結界の魔力ごと飲み込んだ、というのならばまだ納得ができる。だが、ペルセの打った魔力弾は、むしろかなり威力をそぎ落とされており、強大とは正反対であった。


 極小の魔力弾が、魔力壁を完全無力化するケースなど、長いエストラ講師の経験の中でも、初めてのことだった。


「嘘…でしょ…!?ペルセ様…やっぱり、そっちを『受け継いだ』の…!?」


 頭の中で、ヴァーレアが狼狽している。声色からして、驚きを通り越して、もはや青ざめているようだ。


 だが、ヴァーレアの言った内容が、かなり引っかかる。ラウラは、精神世界にいるヴァーレアに聞いてみることにした。


「…ヴァーレア、それはどういうことですか?」

「…時間がないから詳しくは後回しになるけど…。これ、もしペルセ様の魔力弾が的を外れたりとかしてたら、実習そのものを止めなきゃいけなかったよ…」

「なぜです?」


 ラウラの問いに、ヴァーレアは一息ついた。実習を止めなければならないケースなど、最悪の事態しか想定されない。嫌な予感を感じつつ、ヴァーレアの言葉を待った。


「…ランちゃんが考えてることが現実になってたろうね。ペルセ様の魔力は、大概の魔力を封殺してしまえる。ここの魔力結界すらも、例外じゃない」


 現実離れした内容に、ラウラの思考が止まる。

 そんなことが、あり得るのか。あんな極小の魔力で、結界そのものが丸ごと停止、なんてことが。


 だが、エルフィーが手にした的を見ると、威力で封じてるわけではないことが明らかだ。そうなると、ヴァーレアの予測も、間違いとは言い切れなかった。


「…これは、ここで打たせ続けるのは危険過ぎますね」

「うん、ペルセ様には気の毒だけど…」


 壁に当たれば、魔力結界そのものが止められる。そんなリスクを、エストラ講師として許容することはできない。

 幸い、今日の実習時間はもうすぐ終わる。少し早いが、授業をここで切り上げてしまおう。


「…エルフィー先生」

「これは仕方なか。こっちの設備不良やし、あの子も何も悪くなか」


 エルフィーは若干の諦めを含んだ笑みを浮かべている。だが、ペルセに対してヘイトを向ける気は全くなさそうで、安心した。


「…ヴァーレア、後で話を聞かせてもらいますよ」

「も〜…何かここしばらく、驚かされっぱなしなんだけど…」


 若干不満そうなヴァーレアの声を聞きながら、ラウラはペルセ達の元へと戻っていった。

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