ペルセの実習
ペルセが指定された場所へと立つ。その姿は、少し変わった姿をしてる、ただの小さい少女にしか見えない。
「…さて…」
ラウラの視線は、自然とペルセへと向く。
魔界からの留学生である、悪魔ペルセ。同族であるヴァーレアがあれほどまでに畏まり、敬う血統を持つ相手。
ーーーどれほどのものか、見させてもらうとしよう。
ラウラは他の生徒のことも気にかけつつ、ペルセの様子をうかがっている。若干の緊張は見えるが、自然体に近そうな様子だ。
「えっと…」
他の生徒が好き勝手打っていた中、タイミングを伺ってるようだ。ペルセの少し不安そうな目が、こちらを向いている。
ラウラは表情を変えることなく、淡々と口を開いた。
「いつでもどうぞ」
ラウラのその言葉を聞いて、ペルセは小さく頷いてくれた。そして、的の方へと視線を戻した。
皆の視線が、ペルセに集まっている。魔界仕込みの魔力がいかほどのものなのか、高等部の生徒や、エルフィーでさえも気になるようだ。
ペルセは指を的に向けて突き出すと、静かにその場で魔力を練り上げているようで、目を閉じている。
時間が経つと、その指先に白い魔力が集中し始める。
ーーー白い魔力。こんな色の魔力は、初めて見る。
青や紫、紅や桃といった色のついた魔力なら、いくらでも見たことがあった。だが、それは種族による資質や本人の魔力の質によるものだった。
だが、白色の魔力は、異質だ。
これは理論上、なんの穢れもない、とてつもない質である魔力だ、という事実を保証していることに他ならない。ヴァーレアでさえ、白い魔力を出すことはできない。
魔力が白いことの意味は、生徒達には理解できないだろう。白い魔力の神秘的な光景にはしゃぐ子供達から視線を逸らし、エルフィーに視線を向けると、同じ事を考えていたようで、目を見開いている。
「まさか…そんな…!?」
頭の中に、精神世界のヴァーレアの声が響く。やはり、ヴァーレアにもこの異常が理解できているようだ。
これは、後々職員室で話してみる価値があるかもしれない。そう考えながら、ラウラは引き続きペルセを見続ける。
「ド真ん中を狙って…」
ペルセの目つきが、若干変わっている気がする。その一方で、指先の魔力は絞られており、さらに一切ブレがない。クラスで制御が最も上手であるダリスと同等か、下手をするとそれ以上の制御技巧に見える。
「…発射」
ペルセは冷静に、魔力弾を打ち出した。
弾は空気を切り裂く勢いと共に、的へと着弾した。着弾したのは、的の真ん中にかなり近い場所であった。
だが、それと同時に、高くつんざく魔力の破壊音が実習室へと響き渡った。
「うわ!?」
「な、なに!?」
ミノトの時とは違う、ただ魔力が炸裂した時のような音ではない。これは、魔力による防御壁が破壊された、聞きたくない音だ。
生徒達がざわつく中、ペルセの打った的を確認しに、エルフィーが慌てて駆け寄った。
ラウラが周囲を確認しても、実習室の結界に異常は見られない。一体どこからの音なのか。
すると、的を確認したエルフィーが、震えながら小さく声を上げた。
「…的の修復魔法壁が…完全に、無力化されとる…!?」
その言葉はラウラにとって、最悪の事態ではないにしても、異常事態を知らせる一言だった。




