ダリスの実習
ダリスは的の前に立つと、自身の腕の体毛を軽く毛繕いしている。若干はねている毛を引き抜くと、ダリスは高等部の生徒達と同様、指を突き出すような構えをとった。
ーーー悔しいほどに、様になっている。やはり、他のクラスメイトよりも体格が一回り大きいからだろうか。
ダリスは周りのクラスメイトよりも静かに、ミノトとは対照的なほどに動きを見せることなく狙いを定めているようだった。
「む〜…ダリス、ホントに狙いがブレないよね…」
「今集中してるから、声かけないほうがいいんじゃ…?」
頬を膨らませながら文句を言いたげなミノトに、ペルセは慎重に声をかける。
ミノトにとっては慣れたものだろうが、ペルセから見たらなかなか異様だった。
「…ふんっ!」
ダリスは低い声と共に、自身の指先から魔力弾を放った。その弾は、的の端に勢いよく着弾した。
「やっぱり、ダリスすごい…」
ミノトは素直な感嘆に声を上げていた。
的に届かせることができないミノトからしたら、ダリスの狙いの正確さは、確かに羨ましいものなのだろう。実際、周りのクラスメイト達がほとんど的に当てることができてない中で、ダリスの魔力弾は、中心ではないものの的に当てられている。
強さは分からないが、少なくとも狙いは正確なのは違いなさそうだ。
「…ちっ…やっぱり、ド真ん中からズレるな…」
ダリスはなおも、少し不満そうにしている。やはり、ド真ん中に命中させたいのだろうか。周りの反応から見ると、的に当てられただけでもかなりスゴいような印象を受けるのだが。
「あんた、小学五年生やろ?そんくらいの年やったら、当てられただけでも大したもんばい」
「…そうですかね…」
「そうよ。しかも獣人やったら、魔力の性質上、余計制御が難しかはずよ」
高等部の生徒にも劣らないダリスに、エルフィーが声をかけている。先程ラウラと並んでいた時も感じたが、ダリスと並ぶと余計に、エルフィーが小さく見える。
獣人と人間だと、魔力がそんなに違うのか。確かに、ダリスの魔力とミノトの魔力を比べると、ダリスの魔力の方が荒々しい感覚があったが、それは気の所為ではないということか。
「やけん、そげん卑屈にならんでよか!その年でそれだけできて、なお向上心忘れとらんのは、よかことよ!そん調子で、頑張りんしゃい!」
「…ありがとうございます、エルフィー先生」
ダリスが頭を下げても特に気にする様子もなく、エルフィーは楽しそうに笑いながら、その場を離れていく。
ーーー見たことがないタイプの教育者だ。
ペルセはエルフィーを見て、率直にそう思った。自分を教育してくれた相手で、あんなにフランクな者は、今まで出会ったことがない。
「ペルセちゃん!次、ペルセちゃんだよ!!」
物思いにふけっていると、ペルセの後ろからミノトが声をかけてきた。ミノトの指さす先を見てみると、確かに1カ所空きができている。そこが、自分の場所ということだろうか。
「ありがとう、ミノト」
ペルセはミノトに優しく微笑むと、その場所へと向かった。




