実習開始
第三実習室の扉を開けると、そこにはすでにクラスメイト達が集まっている。皆がそれぞれとお喋りをしているようだ。
「さすがに皆揃ってるね…」
「時間に遅れてないからいいだろ」
ミノトとダリスは、特に迷うことなく実習室へと入った。ペルセも、その後に続いて中へと入る。
ーーー何だか、人数が多い。明らかに、一クラスだけの人数ではない。それに、何だかダリスと同等か、もっと大きな学生達もいる。その中には、明らかに人間ではない者達もいた。そして、彼らの着ている制服も違う。
「おりょ?今日の実習は高等部と合同かな?」
「みたいだな…」
ミノトとダリスがその光景を見て、二人でささやき合っている。
ーーー高等部。自分が今いる小学部より年上の生徒達が在籍している学部だと聞いている。
自分のクラスだけではなく、他の学年の生徒達と一緒に授業を受けるのか。これも、学校だと普通のことなのだろうか。
さらに周りを見てみると、ラウラとエルフィーがおり、並んで話しているのが見えた。
ーーーやっぱり、エルフィーはラウラよりも一回り小さい。ラウラと並ぶと、それがより分かる。下手すると、ダリスよりも小柄ではないだろうか。
ラウラ達は、ファイルを二人で見ながら、何かを確認し合っているようだ。だが、遠くて何を話しているかまでは聞き取れない。
「エルフィー先生だ!!じゃあ、このクラスはエルフィー先生の…!?」
「ミノト、静かにしよ…?」
エルフィーの姿を見つけたミノトのテンションが上がってるようだ。声が大きくて目立つ。なんだか少し恥ずかしくなり、ペルセははしゃぐミノトを止めた。
すると、その声をかき消すかのように、実習室にチャイムの音が響いた。すると、話をしていたラウラとエルフィーが、手元のファイルを閉じて、こちらを向いた。
「ほんじゃ、実習始めよか」
「えぇ、皆さんお静かに。今から、本日の実習の中身を説明しますね」
エルフィーは丸い眼鏡を光らせながら、視線を上げる。だが、自分はともかく、ダリスや高等部の男子生徒達からは完全に見下ろされている。やはり、小さい。
その場にいた生徒全員が、二人の方へと視線を向ける。だが、二人は何も動じることなく話を始めた。
「今日の実習は、魔力の精密制御と、それに伴う出力制御の実習授業です。的を用意してますので、それを正確に打ち抜いていただきます」
「小学部と高等部で、的の大きさとか距離は変えるばってん、やることは同じばい!」
そう言いながら、ラウラ達は別の場所へ視線を向ける。その視線の先を辿ると、そこには確かに、それなりに使い古された様子の的が複数用意されている。隣には、より大きな的が同等の量用意されているのが見えた。
あれを打ち抜け、ということらしい。
「無論、待ち時間が発生しますので、その間は出力の調節や、軽めの組手であれば許可します。ただし、私たちの目の届かないところには行かないように」
「外でドンパチやられても責任は取れんけんね!!」
ラウラとエルフィーはそれだけ言うと、それぞれのクラスの方へと向かう。
ラウラが、こちらへゆっくりと近寄ってきた。生徒達の背筋が、自然と伸びる。
「五人ずつ、順番に行います。高等部が先に行いますので、高等部の生徒がやってる光景を見てるも良し、邪魔にならない範囲で、軽く魔力を打ち合うも良しです」
ラウラは静かにそう言った。
魔力の打ち合い。そんなことをして大丈夫なのか。
不安に思いながら、ペルセはラウラを見つめた。ラウラはその視線に気付くと、表情を変えず、視線をペルセに向けてきた。
「…あぁ、そうですよね。説明しておかないと」
ラウラは何かに納得したように呟き、さらに言葉を紡いだ。
「魔力実習室には、安全対策として魔力結界が張られています。多少壊れても即座に修復できますし、外に漏れ出す心配もありません。ヴァーレアのような桁違いの魔力だと話は別ですが…まぁ、私でも破ることはできない結界ですから、ご安心を」
そう言うラウラの奥から感じる魔力は、生徒と比べてもかなり大きい。それにもかかわらず、破れない。かなり頑丈な結界が張られているようだ。
それなら、安心して見ていられる。周りがそれぞれの友達と軽めの組み手を始める中、ペルセは、高等部の生徒の実習風景を見ていることにした。




