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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二部 第四章 魔術学校・エストラでの暮らし

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初めての昼休み

 給食の時間が終わった。


 片付けも終わらせた教室の中には、生徒がほとんど残っていない。皆して、外に遊びに行ったようである。


 だが、ペルセはそれを選ばなかった。外遊びが分からない、というのもあるが、何よりもーーー


「ダリス〜、もっとペルセちゃんと仲良くしようよー!!」

「何で俺まで巻き込むんだ、ふざけんなよお前」


 ミノトがまだまだ一緒にいたい、と言ってくれたからだ。もっとも、その横にはダリスもいたが。


 だが、ダリスも口では嫌がっているが、本気の拒絶をしているようには見えない。呆れてはいたものの、離れようとはしなかった。


 ペルセはそんなダリスを物珍しそうに見た。

 狼の獣人。制服の袖口から見える体毛と、頭に生えてる犬の耳、そして臀部から生えてる尻尾が、ダリスが人間ではないことを如実に示している。


「…やっぱり、魔界の悪魔から見ても、獣人って珍しいのか?」


 ダリスは視線に気付いたようで、自身の腕を眺めている。

 ペルセはダリスの問いに、カクカクと頷いた。魔界には魔獣はいても、獣人なんてものはいなかった。


 ペルセの反応を見たダリスは、小さく笑った。


「だよなぁ…。やっぱ、あんまりいないんだな」

「ど、どういうこと?」


 そう言うダリスの表情は、少し寂しそうだった。ペルセは不思議そうに首を傾げた。


「獣人ってのは、人間に獣の特性を上乗せしたような種族らしいんだ」

「獣…?」

「俺だったら、狼だな」


 ダリスはそう言うと、自身の鼻の下を指でなぞった。

 狼の特徴を上乗せしてる、ということなのか。

 噛み砕いて理解を試みていると、ミノトが口を開いた。


「そうそう!だからダリスってね、足速いし鼻がいいし、しかも強いんだ!!」

「…お前黙っててくんね?」

「褒めたのに!?」


 ミノトは心底意味が分からないようで、ダリスに突っかかった。


 だが、そのおかげでペルセは理解ができた。

 狼という生き物自体は、魔界でも存在はしている。犬に近い肉食の生き物で、群れで狩りを行う動物だ。


 目の前にいるダリスは、人の体に狼の要素が付け加えられてる、ということらしい。


「…まぁ、獣人って種族は、この数百年でかなり少なくなったらしいけどな」

「えっ?」

「俺も詳しくは知らない」


 少なくなった、と言ったか。それは一体、どういうことか。だが、ダリスも詳しい事情を知ってるわけではないようだ。


 ダリスの物憂げな表情を見て、ミノトは開きかけた口をつぐんだ。さすがに、この場面では口を挟むことを止めたようだ。


 普段からそのくらい、律してくれればいいだろうにーーー。


「でもね!ダリスって、魔力強いんだよ!!エストラで実習してても、このクラスの中で誰にも競り負けないんだよ!!」

「黙ってろって言ったよなお前!?」

「実習でペルセちゃんとダリスが魔力ぶつけたら、どっちが強いんだろう…!!ペルセちゃん、悪魔だから…!!」


 やはり、我慢は長くは保たなかったらしい。感心していたのが、一瞬で壊された。


 とはいえ、他種族との魔力のぶつけ合いについては、ペルセも気になるところだ。

 今まで、悪魔同士でしか魔力をぶつけたことはない。だが、ここにいる悪魔は、ヴァーレアしかいないのだ。

 もし仮に、エストラで実際に魔力を使う授業をやるならば、そう言った機会も来るかもしれない。


 実現したらどうなるのか、ペルセにも予想はつかなかった。


「…実習って、どんなことするの?」

「色々あるよ!例えばー…」


 ミノトはそう言うと、指折りで何かを数えながら唸り始めた。

 そんなに種類があるのか。そう思いながらしばらく待つも、ミノトは唸り続けるだけで、何も言葉を発してこない。


「…お前、説明できないんだろ」


 その静寂を破るように、ダリスが口を開いた。その瞬間、ミノトは頬を膨らませながらダリスを睨みつけた。


「ち、違うもん!そんなことっ…!」

「あるだろ。つーかそもそも、お前にそんな具体的な説明ができるなんざ思ってない」

「酷い!幼馴染を信じないの!?」

「信じないっていうか、期待してない」

「なんでぇ!?」


 ダリスはばっさりとミノトを切り捨てている。ミノトは不満げだが、それを強く否定できないあたり、思い当たる節があるのかもしれない。


 ダリスは一息吐きながら、口を開いた。


「…まぁ、やってみりゃ分かる」

「ダリスだって説明してないじゃん!」

「そっちのほうが早いだろ」


 何だか、難しい言葉が出てきた。だが、少なくともこの場で説明する気がない、説明のしようがないことだけは分かった。


 ダリスとの話は、ミノトを相手にするときとは違い、穏やかに進めることができた。


 ーーー気付くと、学校の昼休みは、あっという間に終わってしまっていた。

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