「いただきます」の挨拶
しばらく時間が経つと、全員の席に給食が行き渡っていた。
ペルセの席には、ラウラが指示を出したようで、隣の席のミノトが配膳をしてくれていた。
「…ありがとう、ミノト」
「いーのいーの!!気にしないで!!」
ミノトは本当に何も気にしている様子もなく、笑顔のままで席に座った。
ペルセは少し罪悪感を覚えながら、自分の机に配膳された給食を見る。
白飯にコーンサラダ、そして鯵の開き。さらには豚汁まであった。
ーーーまるで、定食屋に来たかのような健康的なメニューだ。
ミノトの机の上を見ても、同様のメニューだ。
だが、その後ろの席にまで目を向けると、そこには大量の生肉が盛られている。
「ねーねー、ホントにそれ食べ切れるの…?私にもちょうだいよ〜」
「うるさい。仕方ないだろ、種族柄なんだから。つかこれ生だから、お前が食ったら腹壊すぞ」
「ちぇ〜…」
ミノトが不満そうにしているが、その席に座る男子はやや呆れたようにそう答えている。
明らかに、人間ではない。顔付きや体は完全に自分と同様の人型だが、頭にはまるで犬のような耳が生えており、椅子の下からはフサフサの尻尾が生えている。少年の黒く短い髪と同じような、真っ黒な尻尾だ。
二人のやり取りを眺めていると、少年と視線が合った。少年はそのつり目をこちらに向けてくる。
「…何だ?お前、狼の獣人を見たのは初めてか?」
「そりゃそうだよ!ペルセちゃんはついこの間、魔界から来たばっかりなんだから!」
少年は頬杖をついたまま、ペルセを見つめている。
狼の獣人。魔界で育ったペルセにとって、人間すらも見るのは初めてなのに、獣人なんて聞いたこともない。少年の問いに、ペルセは何も言わずに頷いた。
「それはそうと、ミノト、お前前向けよ。先生がいただきますの挨拶しようとしてるぞ」
「あ、ヤバ!」
「ほら、お前も」
少年はそう言うと、教壇の方を指さした。
「ほぇ?」
言われてペルセは教壇の方を見た。すると、確かにラウラが教壇に座っていた。その目の前には、ペルセと同じ給食のメニューが配膳されている。
ラウラは手を合わせながら、静かに口を開いた。
「さて皆さん、今日も午前中お疲れ様でした。今日は留学生という新しい仲間が増えました」
ラウラはそう言うと、一瞬だけこちらに視線を向けてきた。それに釣られるように、一部の生徒がこちらを見てくる。
ーーー未だに、この感じには慣れない。
「給食を食べたら、お昼休みです。皆さん、新しい仲間と仲良くしてあげてくださいね。それでは、いただきます」
「いただきまーす!!」
ラウラが静かにそう言うと、対照的なほどに元気の良い子供の声が、廊下にまで響き渡った。




