給食への切り替わり
その後の教室では、ラウラの監督の元で授業が行われていった。
休み時間になれば、ミノトが間に入ったせいか、複数の女子生徒から魔界や悪魔のことについて質問攻めを受けてしまい、陰から見ていたヴァーレアに叱られていた。
授業の中で、魔界では見たことのない文字や、人間界独自の魔力の扱い方や鍛え方に関する考え方等が授業で出てきた。
ミノトを含めた周りの生徒の中には、それを退屈そうに聞いてる者も少なくはなかった。確かにペルセにとっても、授業の中身は、目を輝かせるようなタイプの面白さではない。
ーーーそれでも、楽しかった。
そして気付けば、時計はお昼時を示しており、午前中の授業の終了を知らせるチャイムが、教室に響いた。
それを聞いたラウラは、静かに教壇の上でテキストを閉じた。
「…はい、午前中はここまでとします。前々から伝えている通り、今日は午後も私が全て担当しますので」
「やったー!!」
「ミノトさん、静かに」
ラウラの言葉に、ミノトが大きな声をあげた。ラウラにたしなめられて素直に座ったが、その顔は完全にニヤけている。
本当に、ミノトはラウラのことが大好きなんだ。ペルセはそう感じていた。
「では、給食の時間ですね。配膳係は給食室へ取りに行ってください。今週の配膳係は…」
ラウラは掲示物を確認した後、持っていたテキストを教壇の中にあるスペースへとしまった。それと同時に、一部の生徒が気怠そうにしながら、教室後方にあるロッカーから、何か白い袋を取り出している。
中には、どうやらエプロンのようなものが入ってるようだ。だが、普通のものよりやたらと厳重に頭や顔を覆っている。
何だか、衛生にうるさそうな格好である。ハイーラでも、料理する時にあそこまでは着込んでいなかったはずだ。
ペルセはその光景を眺めながら、ふと疑問に思ったことをミノトに聞いてみることにした。
「…ミノト、普段はラウラさんがここにいないの?」
「普段はずっとここにいるわけじゃないよ!いつもは授業によって来る先生が違うんだよ!」
ーーー普通に聞いただけなのに、ミノトのテンションはずっと高い。ラウラは普段、ずっとこの教室にいるわけではないらしいから、それが嬉しいことなのかもしれない。
そういえば、職員室でもエルフィーに「自分の授業受けることがあったら」と言われた記憶がある。
「…どんな先生がいるの?私、ラウラさん以外だと、まだエルフィー先生しか分からないんだけど」
「エルフィー先生に会ったの!?よりによってそこと!?」
ミノトはそう言うと、自分の口を慌てて塞いだ。どうやら、予想していたより大きな声を出してしまったらしい。
だが、ラウラは相変わらずの眠そうな目を向けてくるだけで、特に何も言う様子はない。
「エルフィー先生はね〜…すっごく面白いの!」
「面白い?」
「喋り方がまず独特だし〜…。でもすごく明るいし〜。何より、ノリがいいし!!」
最後がやたらと強調されていた気がする。
ペルセにしてみたら、職員室で会ったエルフィーに、そんな印象はあまりなかった。
だが、ミノトが言うのなら、そうなのかもしれない。頭の片隅には留めておくことにしよう。
「あとね〜…」
「ミノちゃん!!早く来て!!給食なくなっちゃうよ!!」
「あ、うん!!ごめん、また後で!!」
ミノトがさらに続けようとするも、配膳に並んでいる友人に呼ばれてしまい、そちらへと走っていった。
ずっと、慌ただしい。魔界での暮らしでは見なかった光景だった。




