自己紹介
教壇の上に、ラウラが立っている。教室の中にいる子供達はラウラを見ているが、何だかチラチラとこちらを見てきている気がする。
居心地の悪さを感じながらも、ペルセもラウラの方へと視線を向けた。
「皆さん、おはようございます」
「おはようございます!!」
ラウラの挨拶に、ミノトを含めた全員が、大きな声で挨拶を返す。ペルセは驚きながら周りを見るが、ラウラは特に動じている様子を見せることなく、教室の中を見渡していた。
「…さて、皆さんお気づきでしょうが」
ラウラは静かに口を開いた。その言葉とともに、ラウラの視線がこちらに向いた。
ーーー気まずい。
助けを求めるように、ペルセは隣に座るミノトへ視線を向けた。だが、ミノトはその視線に気づいても、ニコニコしながらこちらを見ているだけだった。
「以前からお話していた留学生が、今日から三週間、皆さんと過ごすことになりました。…ペルセさん、こちらへ来てください」
教壇へ上がるように指示されたペルセは、おずおずとラウラの方へと向かう。その間、座っている子どもたちから視線を向けられていた。
たかが数メートルの、短い距離。その距離が、何だかいやに長く感じる。気のせいかもしれないが、冷や汗が止まらない。
ざわついている子どもたちの声が、いやに大きく聞こえてくる。
「はい、静かにしてくださいね」
ペルセが教壇に上がるのとほぼ同時に、ラウラがそう言った。すると、ざわついていた子供達が、皆一瞬でラウラの方を見た。
ーーーよほど、訓練されているのだろうか。
明らかに見当違いであることは分かっていたが、ペルセは思わずそう考えてしまった。
「魔界から来た悪魔である、ペルセさんです。自己紹介、お願いできますか?」
ラウラは優しく声をかけてくる。
何とか必死に応えようとするが、口がうまく動かない。だが、ペルセはそれでも必死に言葉を紡ごうとした。
皆が見てくる。あまり注目されたことのないペルセにとって、それは初めての経験だった。
思わず、ミノトに視線を向ける。
ミノトは変わらない表情を浮かべているが、ペルセの視線に気づくと、自身の顔の隣で、笑顔でサムズアップをした。
ーーー頑張って。
そう、言われた気がした。
「…ぺ、ペルセっていいます。これから三週間、よろしくお願いします」
口が震えている。それでも、何とかそれだけ絞り出すことができた。
だが、それだけで十分だった。ラウラは隣で、満足げに微笑んでいた。
「皆さん、短期間ですが仲良くしてあげてくださいね。ペルセさん、席に戻ってくれて大丈夫ですよ」
ラウラは教室内を見回している。
ペルセも教壇から降りながら、生徒達の様子を観察していた。
生徒たちの反応は、様々だった。留学生が来たことにはしゃぐ者、興味深そうな目をこちらに向けてくる者、特に大きな反応をしない者。
ーーーそして、悪魔という種族に反応する者。
それぞれの視線を受けながら、ペルセは席へと戻っていった。




