エストラの生徒との初邂逅
足音のする方へと視線を向けた。そこには、少し厚めの紙の束を持った、フォーマルな衣装を着た男性と、その隣でペルセと同じ制服に身を包んだ少女がいた。
「ラウラ先生ー!!おはようございます!!」
「はい、おはようございます」
少女は元気な声で、ラウラに挨拶をする。ラウラも微笑みながら、挨拶を返していた。
少女を見ると、ペルセ自身と然程変わらない年齢に見える。だが、うちに秘める魔力は、ラウラと同質の、人間のものだった。
ーーーこれが、人間界の子供なのか。ペルセは不思議そうに、少女を見つめる。
「…ラウラ教授」
すると、隣にいる男性が、少し気まずそうにラウラへ声をかけてきた。ラウラは少女から視線を外し、男性の方へと向き直った。
「お兄ちゃん!!早く済ませてよー!!あたし、ラウラ先生とお話したいのー!!」
「分かってる…。分かってるから、少し静かにしててくれ…」
ーーー何だか、見てて微笑ましい。魔界の商店街でも、時々子供が何かをねだってる姿を見ることはあった。何なら、自分もやっていたことがある。
最近ではやらなくなったが、もしかしたら自分とハイーラ達もこういう風に見えてたのかもしれない。そう思うと、少し気恥ずかしくなってきた。
男性は妹をたしなめながら、ラウラに話しかけた。
「提出が遅くなりました。こちら、『魔力運用応用研究論Ⅱ』の課題レポートです」
「…わざわざ直接提出しに来なくても、デスクに置いといてくれればよかったんですが…まぁ、受け取りますよ、期限も過ぎてませんし」
ラウラは若干呆れたようにしながらも、男性が差し出した紙の束を受け取った。
なんの話をしているのか、よく分からない。だが、少なくとも小学部でやるような中身ではないことだけは分かった。
そんな風に思っていると、静寂を切り裂くように少女が再度口を開いた。
「お兄ちゃん、用は済んだね!!じゃあバイバイ!!」
「ちょっ、おい押すな押すな!!」
少女は用が済んだだろとでも言わんばかりに、兄を押し出している。兄も文句は言っていたが、特に妹に逆らう様子も見せず、大人しくその場を離れていった。
ーーー状況についていけない。ペルセは呆然と、その光景を見ていることしかできなかった。
一方、隣にいるラウラは平然と、受け取った紙の束を自身の持つノートの中に挟んでいる。見慣れた光景なのだろうか。
「ラウラ先生!!」
「…もう少しお兄さんは大切にしてあげては…?」
「いいの!お兄ちゃんだから!!それでね…!!」
少女はそのまま、ペルセを放置してラウラと話をし始めた。
兄への扱いは、なかなかのものだ。だが、それだけ気遣わなくていい相手である、ということなのか。ペルセにとっての、イアノのような存在に近いものなのかもしれない。
しばらく呆然としたまま見つめていると、少女の視線が一瞬こちらへと向いてきた。
「…ラウラ先生?そういえば、そこにいる子は…?」
「アナタ、ようやく気付いたんですか…」
ようやくこちらに気づいた様子の少女が口を開くと、ラウラは少し呆れたようにため息をついた。




