人間界での朝食
風呂から上がり、髪を整えた後、着替えとして用意されている制服に袖を通す。
若干サイズが大きい。袖が少し長く、袖口からは指先しか出てこない。しかし、問題なく着用できる範囲だ。
「…スカート、やっぱり短い…」
普段着ているワンピースだと、膝下まで丈が伸びている。しかし、今着ている制服のスカートの丈は、膝の少し上までしかない。
パンフレットでも分かっていたが、いざ自分が着てみると、少し恥ずかしくもあった。
ふと鏡で自分の姿を見てみると、そこには白いセーラー服に身を包んだ自分の姿が写ってる。この姿をハイーラやマール、そして父や母が見たら何と言うだろう。
「…ふふっ」
想像すると、少し笑えてくる。特に母・デメナなどは滅茶苦茶に甘やかしてきそうなのが容易に想像できた。
ペルセは軽やかな足取りで脱衣場を出た。
脱衣場を出てリビングに戻ると、机の上にトーストとソーセージが一人分置かれている。どうやら、これが朝ごはんらしい。
比較的簡単に用意できて、かつお腹も膨れる。魔界でも時間がない時によく食べてた、鉄板の朝食だった。
しかし、向かいに座るラウラの席には、何も用意されていない。ラウラ本人は本を読んでいるだけで、見向きもしてこない。
「あの、ラウラさん…」
「何でしょう」
ペルセがおずおずと声をかけると、ラウラは本にしおりを挟み、こちらに視線を向けた。
「ラウラさんの分は…?」
「私は先に済ませましたので、お気になさらず」
ラウラはそれだけ答えると、再び本に視線を落とした。すると、窓の方にヴァーレアが姿を見せ、呆れたようにため息をついた。
「ラーンちゃん。こういう時は一緒に食卓を囲むのがファミリーなんじゃないのー?」
「そんなエゴのために、この娘を起こすわけないでしょう。それよりも、色々準備をしていた方が合理的です」
ラウラはヴァーレアの言葉を一刀両断する。気遣ってくれてるのは分かるが、あまりにも事務的に言うものだから、少し寂しくもある。
ヴァーレアは一瞬呆然とした後に、口を開いた。
「…家の動線を確保する時の動きを、普段からやってくれたらなぁ…」
「生徒が泊まっているのですよ。不便を感じさせてはいけません」
ペルセはトーストを食べながら、二人のやりとりを見ている。ラウラは本から視線を外すことなく、文句を言ってくるヴァーレアに冷静に返答している。
「…お二人って、仲良いですよね」
そんな言葉が、思わず出てきた。その言葉を聞き、ラウラは無言で本を閉じ、ヴァーレアは嬉しそうに口角を上げていた。
「そりゃー、ボクとランちゃんは付き合いが長いからね!」
「まぁ…否定はしません」
「お、珍しく素直」
「…やっぱり否定します」
「なんで!?」
即効で手のひらを返したラウラに、ヴァーレアが不満そうな声をあげる。何だか、マールとハイーラを思い出すような、遠慮のなさだ。
「それはそうと…朝ごはんと片付けを済ませたら、出発しますよ」
「え?」
ペルセはソーセージを頬張りながら、時計を見る。登校時刻まで、まだかなり時間がある。
そんなに早く行って、どうするのだろうか。不思議そうに首を傾げていると、ラウラが言葉を続けた。
「私は講師ですので、生徒よりも早めに出勤する必要があります。アナタも一緒に行く方が、話がシンプルです」
「…分かりました」
そう言われて、ペルセも納得した。
とはいえ、そこまで急ぐ理由もない。ペルセはのんびりと、朝食を食べていた。




