朝の支度
翌朝。人間界での夜明けが訪れていた。
「ふぁぁ…」
欠伸をしながら、ペルセはペタペタと廊下を歩いていた。髪もボサボサで、頭もぼーっとしている。
ーーー眩しい。魔界では見られない、明るい朝だ。窓から漏れ出る光に、ペルセは思わず目を細めた。
リビングに出ると、そこにはすでに、準備万端の様子でコーヒーをすするラウラの姿があった。
「おはようございます」
「…んぇ…?」
ラウラが視線をこちらに向けてくる。あまりに準備バッチリなその様子を見て、ペルセは思わず不安になる。
もしや、寝坊したか。そう思い、時計を見た。
しかし、初回登校時刻まで、まだ二時間以上余裕がある。支度するには十分すぎるほどに時間がある。
ーーーハイーラですら、こんなに早く起きてきてなかったのに。そう思わざるを得なかった。
「とりあえず、シャワーを浴びて、髪を整えてください。その後で、ご飯にしましょう」
ラウラはそう言いながら立ち上がり、ペルセを浴室へと引っ張っていった。
引っ張られてはいたが、その力は極めて弱いものだった。ペルセはそれにすら逆らわず、素直についていく。
「浴室から出たら、制服に着替えてください。下着などの替えは、すでにそちらの棚に入れてあります。洗濯物は、こちらの洗濯機に入れておいてください」
ラウラはそう言いながら、昨日ペルセがもらったエストラの制服を差し出しつつ、様々な場所を指示している。
ーーーいつの間に、ここまで整えたのか。自分が寝ている間に、ここまで準備されているとは。
ペルセが脱衣場で呆然としていると、ラウラが静かにその扉を閉める音が聞こえた。
「…着替え…」
ペルセは訝しみながらも、引き出しを開けた。
その中には、自分が昨日持ってきたものとは別の、女児用のパジャマや下着の替えなどが入っていた。
わざわざ、買ったのだろうか。三週間しかいない自分のために。
もはや、驚きを通り越して、感心してしまう。
「…っとと、あまり時間をかけてられないや」
だが、驚いてばかりもいられない。
まだ時間的な余裕があるとはいえ、無限ではない。早々に支度を済ませるとしよう。
ペルセは着ていた服を脱いで、洗濯機の中に入れる。魔界にも洗濯機はあるが、魔界で暮らしてたときとはかなり違う、何だかゴテゴテしてて機械的な代物だ。
人間界は魔界とは違い、魔力の扱いよりも科学という分野が発達しているとも聞いている。この洗濯機も、科学というもので作られているのだろうか。
「…やっぱり、違う世界なんだなぁ…」
ペルセはそのことをしみじみと実感しながらも、シャワールームへと入っていった。




