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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第二章 上位の町・アスティアノ
20/71

第二の受容者ーハイーラー

 ーーー視線を合わされていると、妙に落ち着かない。気まずくなり、ペルセは思わず一歩下がり、マールの方に少し近付いた。


「…私は、ハイーラ。そこにいる怠け者…あぁ、マールとは…まぁ、長い付き合いの関係、ってとこかしらね」

「怠け者って酷くな〜い?」

「自分でご飯も用意できないくせに何言ってんの」


 ハイーラの返しに、マールは何も言えなくなったようだ。

 ーーーなんというか、言葉こそキツいが、どこかふざけ合ってるダスノムの悪魔達のような、そんな関係にも見える。多少キツいこと言っても大丈夫だ、と。まるでそう確信しているようだ。


「…失礼」


 マールに言い返していたことをかき消すかのように、ハイーラは小さく咳払いをした。


「それで、お嬢ちゃん?…お名前、聞かせてもらってもいいかしら?」


 ハイーラは再びペルセに視線を戻すと、先程よりも柔らかい声で話しかけてきた。


 じっと、目を見られている。

 目の前にいるハイーラは、怖くない。そう、思っている。答えなければならない。それも分かっている。なのに、口は動かない。


「この子はね〜」

「アナタには聞いてないわよ。この子に聞いてるの」

「え〜」


 ペルセが言葉を発せずにいると、マールが口を開いた。しかし、その発言を、ハイーラは遮った。

 マールは不満そうな声をあげているが、ハイーラはマールに言葉を返した後、再びペルセの方を見た。


 ーーー沈黙。


 ペルセは知らず知らず、マールの体に身を寄せていた。まるで、隠れるかのように。

 ハイーラは、特に急かしてきていない。しかし、ここまで見つめらている。それが口が重くした。


「…あんまり、見つめないであげたら〜?さすがに、そんなガン見されてたら、言いにくいと思うよ〜?」


 そんなペルセの背中に、マールが優しく手を添えてきた。頭を洗われたときにも感じた、包みこまれるような感覚ーーー。不思議と、力が抜けた。


「…それもそうか…」


 ハイーラはマールからの言葉を受け、ペルセの顔から視線を外した。少し、戸惑っているようにも見える。


 しかし、視線が外れたことで、不思議と重さがなくなった。これなら、言える。


「ペルセ…です…」


 ペルセは蚊の鳴くような声で、ハイーラに言った。ハイーラの耳は、その声を聞き逃さなかった。


「ペルセちゃん、ね。ありがと、答えてくれて」


 ハイーラの表情が、一気に柔らかくなった。それと同時に、ペルセの頭に、何かが乗ったかのような感触があった。


「よく言えたね〜」


 マールの手だ。その手は、ペルセの頭をゆっくりと、しかし優しく撫でている。頭を洗っていたときとは真逆で、そこには全く力が込められていなかった。


「…さてと。それじゃ中に入ってちょうだい。あまり外でああだこうだ言ってても仕方ないし」

「それもそうだね〜」


 そう言うとハイーラは立ち上がり、ペルセ達に背を向けた。そして、家の中へと戻っていった。


「それじゃ、行こっか〜」


 マールはペルセの手を引こうとした。しかし、ここに来るときと異なり、ペルセは自分でハイーラの案内に従い、歩き出した。


「…よっぽど、お腹すいてるんだね〜」


 …そんなマールの独り言は、ペルセには聞こえなかった。

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