未知との遭遇
ラウラとペルセは、エストラの廊下に出た。来た時と何ら変わらない、少し生活感のある廊下だ。
「これから、私の家に案内しますね」
ラウラはそう言うと、そのまま歩き始めた。ペルセはその後を追いかける。
しばしの静寂。
ラウラとの間に、言葉は交わされない。
時々、遠くから子供の話し声や紙とペンの擦れる音などが聞こえてくる。
しばらく歩いていると、大人が出入りしてる空間が見えてきた。職員室、というものだろうか。
「荷物を取ってきますので、ここで待っててください。すぐ戻りますから」
「分かりましたー」
ラウラはそれだけ言うと、職員室の中へ入っていった。気になってチラリと中を覗くと、大人たちが各々のデスクで書類と格闘している光景が見えた。
何だか、アモディエナやその部下達が仕事をしてる時の風景を見てるようだ。アモディエナ達も、いつも周囲に書類を積み上げてた気がする。
「おっ?新顔かね?」
職員室の中を眺めていると、後ろから声をかけられた。
ドキッとしながら、背後を見る。そこには、橙黄色の魔女っ娘衣装に身を包み、金髪を肩まで伸ばした、丸眼鏡の少女がいた。身長は、自分より少し大きいくらいで、大人というには小柄だった。
何より、髪の隙間から見える耳が、長い。人間でも、悪魔でもない形の耳だった。
「…えっと…」
「あ〜、ごめんごめん。別に怒っとらんよ。見慣れん顔やったけん、声かけただけばい」
ペルセが戸惑ってるのを見て、少女は、頬をかいた。
相手は制服を着ていない。それは、一目で分かる。だが、こんな小柄な相手が、ラウラと同じ、エストラ講師なのだろうか。ペルセには、想像もつかない。
「…何してるんですか、エルフィー先生」
オロオロしている間に、職員室から呆れ顔のラウラが戻ってきた。その手には、鞄が握られている。
エルフィーはラウラの方へと勢いよく顔を向けた。
「ラウラ先生!この子、ラウラ先生の知り合い?」
「魔界からの留学生ですよ」
「ほー!この子が!?」
小柄なエルフィーと、普通の大人の体格をしたラウラが、対等な立場で話している。ペルセからしたら、何だか変な光景だ。
だが、二人は特に何の違和感も抱いていないようで、普通に話を続けている。
「これから学長への挨拶かい?」
「それはもう済みました。私はこれから、ホストファミリーとしての業務に入ります」
「あ、そうなん?じゃあ今日はこのまま?」
「えぇ。それではお疲れ様でした」
「あいあい。お疲れさん!」
エルフィーは言うだけ言って、職員室の中へと入っていった。
ーーーエストラにはあんな人もいるのか。
人間以外の種族がいるとは聞いていたが、あのエルフィーという女性は、何なのか。
「ペルセさん。行きますよ」
呆然としていると、ラウラから声をかけられた。ペルセはハッとし、ラウラの方へと視線を向けた。
ラウラはペルセが自身を見たことを確認すると、そのままペルセの前を歩き始めた。
ペルセはその後を、必死に追いかけた。




